自分の思い通りにならないと、すねる、どう喝する、報復する。慢心する権力者にどう対抗するのか。野村萬斎が演じる戦国時代の華道家元・池坊専好は天下人の豊臣秀吉に迎合せず、華道で立ち向かう。そこまで踏み込んだら命が…。終盤はハラハラする場面の連続だ。

 16世紀の京の都。専好が秀吉に「大砂物」と呼ばれる巨大な生け花を披露したという逸話を基にした物語。約400年眠っていた池坊に伝わる秘話を映画化した。秀吉は自分をいさめ続ける利休を切腹に追い込む。さらに愛息の鶴松を生後数年で亡くしてから正気を失い、「猿…」と陰口をたたいたとして罪のない街の人々までも断罪する。

 華道と茶道。同じ伝統芸能で互いに心を通じ合わせた専好は利休の切腹に心を痛め、天下人を花の力で説き伏せる。

 飾らない無邪気なキャラを演じた萬斎は全身全霊で花の奥深さとすごみを表現している。撮影のために茶道を学んだ利休役の佐藤浩市、利休の頭を鬼気迫る表情で踏みつける市川猿之助らの演技も見応えたっぷり。華道家主役の戦国時代劇だが、現代にも通じる哲学がある。【松浦隆司】

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