2LDKで男2人暮らしをする、西島秀俊が演じる弁護士“シロさん”こと筧史朗と内野聖陽が演じる恋人の美容師“ケンジ”こと矢吹賢二の日常を描く、よしながふみ氏の漫画を実写化した、19年4月期のテレビ東京系深夜ドラマの映画化作品。20年元日放送のスペシャルドラマを経て2年強で映画化と、理想的なステップアップを果たした。

今作では、シロさんがケンジを京都旅行に連れていく。表向きの理由は誕生日プレゼントだが、実際はドラマで描かれた年始に実家へケンジを連れていったエピソードで、ケンジを受け入れたと思われた母久栄(梶芽衣子)が、もう連れてこないで、と言ったことへの謝罪の思いからだった。

ただ、この作品が描きたいのは、同性愛に対する家族や周囲の理解うんぬんではなく、食卓を挟み、語り合う2人の姿を通し、大切な人と心穏やかに生きる、ささやかな日常がどれだけかけがえのないものかということだろう。映画にはケンジの家族も初登場し、どのような形を取ろうとも家族であること、家族になることの尊さも描いている。

西島が10月6日の完成報告会で口にした

「たくさんの人と一緒に笑ったり、涙したりを、この映画で体験できたら、こんなに幸せなことはない」

という言葉が全てだろう。【村上幸将】(このコラムの更新は毎週日曜日です)