クスッと笑えたり、ホロッとさせられたり…。東映京都撮影所(京都市)が、所属俳優計186人を順次主役にして制作するショートムービー(短編映像)がおもしろい。今年4月から毎週1話ずつ動画投稿サイド「You Tube(ユーチューブ)」で「東映京都俳優部ショートムービー」というタイトルで無料公開を始め、第2弾の「夏クール」では、時空を超えて本能寺の織田信長にピザを配達する「デリバリー」など新たに9本が公開中です。クスッが満載です。

「デリバリー」の冒頭では、弓から放たれた矢がピザ店の壁に突き刺さります。矢の先に結ばれた和紙を女性店員が広げると

「ミックスピザ一枚 炭酸水一本 至急本能寺まで 天正十年六月二日 信長」

スタントで活躍する田中千尋が女性店員に扮(ふん)しています。配達用の段ボール箱にピザを入れ、炭酸水を腰に巻き付けたバックへ。軽快な三味線のリズムの乗って走りだし、時空を超えて時代をさかのぼっていきます。配達の途中には侍と遭遇し、華麗な身のこなしで危機を脱出していきます。

いざ、ピザを待つ信長がいる本能寺へ。炎に包まれる部屋で目を閉じる信長の前に現れた田中はその場にそぐわない明るい声で「お待たせしました!」。信長が炭酸水のキャップを開けると、プシュッ~の音とともに噴き出す炭酸水が信長の顔面を直撃。「おのれ…」。怒りをとびきりの笑顔で受け止めると、画面には「時をかけるスタント女優」の文字が現れます。

映像は1話90秒。東映京都撮影所の俳優部次長、矢後義和氏は「コンセプトはおもしろい。なおかつ個性が垣間見えるです」と話します。

第1クールで公開された「火吹き男 見参!」では俳優の高島和男が口から火を吹く特技を披露。吹矢やホラも吹く一方、「もともと老け顔なので、これ以上老けない」とシャレを交え、最後は「ドラマでは火を吹く役はそんなに多くないんです」とオチをつけます。

夏クールの「斬られても斬られても」は親子の話でちょっと泣かせます。夏クールの9本の監督・脚本は若手の有望株の西片友樹監督が担当。スタッフが知恵を出し合い、9本を2日間で撮影したそうです。もちろん、低予算です。

矢後氏によると「京都の俳優さんを育てていこう」と、昨年10月に東映京都撮影所に俳優部を立ち上げました。東映俳優養成所(京撮内)の卒業生を中心に男性99人、女性87人が所属。時代劇俳優らベテランや中堅がそろっています。「個性豊かな俳優がそろっていることをショートムービーを通じて知ってもらいたい。映像にはそんなにがっかりさせるものはないはず」(矢後氏)。火吹きあり、スタントあり、「なんでやねん!」とツッコミたくなるシーンもあります。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)