将棋のプロ養成機関、奨励会に所属する山下数毅(かずき)三段(16)が先日、大阪府高槻市の関西将棋会館で行われた第38期竜王戦ランキング戦5組で初優勝を飾るとともに決勝トーナメント(本戦)出場を決めました。プロではない奨励会員のランキング戦優勝&本戦出場は史上初の快挙です。藤井聡太竜王(22)への「竜王戦ドリーム」を実現できる切符を異例のルートで手に入れました。

前期竜王戦には三段リーグの成績優秀者として一番下のクラスの6組に参加。6組2位となり、奨励会員として初めて5組に昇級しました。今期は5組で藤本渚六段(19)や、22年叡王戦のタイトル挑戦者の出口若武六段(30)ら破り、優勝しました。

今期の勝ち上がりについて「(前期は持ち時間)5時間を指し始めたときは、自分には長すぎて、あまり時間が使えなかった。今期は落ち着いて考えることができ、前期より大きく崩れることが減った」と快進撃の要因の1つとしてタイムマネジメントを挙げました。

竜王戦本戦は変則トーナメントで、ランキング戦最上位の1組から5人、2組から2人、3~6組は各1位が進出します。5組優勝の山下三段は本戦では1回戦からの登場となり、5連勝すれば挑戦者決定3番勝負に進出し、そこで2勝すれば、藤井竜王への挑戦権を獲得することになります。

6歳年上の若き王者の印象をこう語ります。

「ありきたりなってしまいますが、序盤から中盤への精度が高くて、局面への認識の高さが突き抜けている印象です」

過去5組優勝から挑戦権を獲得したのは、23年の伊藤匠叡王(当時七段)だけです。若手がタイトル戦の序列1位の竜王戦を勝ち上がることを「竜王戦ドリーム」と呼びます。

本戦ではタイトル経験者ら強敵が待ち受けます。

「ライバル? これまであまり比較してきたことがなくて、ちょっと難しいです。基本は自分の実力を高めること。性格はあまり他人を気にしないので、これからも実力を高めることを精いっぱいやっていきたい」

将棋界は人工知能(AI)による研究が全盛時代を迎え、若手の成長曲線が急になっています。数学者の父を持つ京都市在住の高校2年生が異例の「竜王ドリーム」に挑戦します。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)