囲碁の井山裕太碁聖(37)が10日、大阪市の関西棋院で行われる第51期碁聖戦5番勝負第4局に臨みます。第3局では挑戦者の佐田篤史七段(30)を破り、対戦成績を2勝1敗として防衛にあと1勝としました。勝てば防衛、敗れれば、無冠の危機を背負って最終局に臨むことになります。
かつて囲碁界初の7冠を達成し、長く第一人者として走り続けてきた井山は一力遼名人(王座・天元)、芝野虎丸棋聖・十段らと長年にわたってタイトル戦線でしのぎを削ってきました。若手世代の台頭も強く意識しています。
人工知能(AI)による研究が当たり前となった時代に、棋士それぞれの個性や独自性をどう盤上に出すかは大きな課題です。井山も「自分なりのオリジナリティー」を大切にしながら、積み重ねてきた経験をどう強みに変えるかが問われていると受け止めています。
37歳となった今、経験値は確実に積み上がっています。ただ、経験は時に迷いや怖さにもつながります。井山はそれを単なる蓄積に終わらせず、判断力や勝負どころでの決断に生かすことが重要だと考えています。
近年は1局を最後まで戦い抜く持久力や、年間を通じて高いコンディションを保ち続ける難しさも感じており、技術面だけでなく、体調面、精神面の調整にもこれまで以上に意識を向けています。
6月下旬に大阪市の関西棋院で行われた第34回関西囲碁将棋記者クラブ賞の授賞式に出席した際には「昨年は好不調の波が大きい1年だった」と話し、「良くない時期に早く抜け出そうとして、どんどんドツボにはまってしまうことも多かった」と振り返りました。
思うように結果に結びつかない時期も長くありましたが、苦しい時間を今後の力に変え、自分自身をアップデートし続ける姿勢を崩していません。
16、17年の2度、全7冠を独占しましたが、現在は1冠。それでも「あれこれ考えるというよりも、シンプルに自分の今できる最高のパフォーマンスを目指す」と前を向きます。目の前の一局に集中し、その時点でのベストパフォーマンスを出すこと。碁聖を守るためにも、再び大きな舞台で戦い続けるためにも欠かせないと見ています。
佐田は7大タイトル戦初登場ながら、井山を相手に互角以上の戦いを見せています。井山にとって第4局は、防衛を決める好機であると同時に、自らの現在地を示す勝負でもあります。経験、決断力、コンディション管理。そのすべてを盤上に注ぎ、なお囲碁界の最前線で戦い続ける強さを示せるか。真価が問われる一局となります。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




