宙組新トップ朝夏まなとが、本拠地お披露目作で、名作オペラに臨む。「王家に捧ぐ歌-オペラ『アイーダ』より-」は、兵庫・宝塚大劇場で、明日5日に開幕(7月13日まで)。古代エジプトの将軍にふんし、金属がちりばめられた衣装を身にまとう。重量感を“トップの重み”ととらえ、初日を迎える。東京宝塚劇場は7月31日~8月30日。

 新トップに就き、朝夏が初めて本拠地のセンターに立つ。

 「宙組生全員がそろって、真ん中に自分がいる。いよいよだなという気持ちです。作品的にも、ラダメスがみんなを引っ張って中心にいる。自分が誰よりもしっかりやって、その姿をみんなが見て…という形を実現できている気がします」

 今作はオペラ「アイーダ」の宝塚版として、03年に湖月わたる主演で初演。古代エジプトを舞台に、将軍ラダメスと敵対するエチオピアの王女アイーダの悲恋を描く。展開は全編、音楽でつづられる。初演時は入団間もなかった。

 「スケールがなんと大きい作品だろう、と。宙組はコーラスで評価してくださることが多いので、エジプトの壮大さもきっちりと表現したい。ラダメス役は包容力を問われるので、男役として挑戦のしがいがある。今、組がすごくいい状態で、エンジンの掛かり具合はもう、全開です!」

 衣装も古代エジプトがテーマだけに、装飾も盛大で、重量感がある。

 「いや~もう、ただただ重いです(笑い)。ですけど、衣装さんから『その重さがトップの責任だよ』って言われました」

 大羽を背負い大階段を下りれば、より一層その実感は増す。トップ娘役実咲凜音とは、花組でも一緒だった。アイーダにふんする実咲とはデュエットも多い。

 「実咲のアイーダは野性的で、おけいこ場からエクステ(つけ髪)をつけて、長い黒髪。心を動かし、震える役なので、けいこを重ねるたびに絆が深まっていると感じます」

 朝夏自身もけいこ場から役柄に入りきるタイプだ。

 「前作(TOP HAT)は動きが激しく、大きいので、普段もせわしない感じでしたけど。今は、けいこ場でマントを着けているので、自然と普段歩くのもゆっくりですね」

 エジプトには行ったことはないが、旅行雑誌で歴史から勉強したという。

 「雰囲気を知ろうと思って。アクセサリー、洋服もエジプトっぽいものに興味を持っちゃいますね」。取材の日、着てきたシャツも、砂色に魅せられ購入。「普段なら絶対買わない色合いのシャツです」と笑った。

 目前の課題に全力で取り組む。それは母の教えだ。

 「初めて新人公演が決まったとき、その日が日舞の試験の日で。母に連絡したら『とりあえず、試験でしょ』と。目の前のことに全力を注げという言葉をもらった。自分で、先々のことにとらわれているなと感じたら、その言葉を思い出すようにしています」

 星組からは、真風涼帆が異動。星組前トップ柚希礼音の下で、男役を学んできた新戦力が入る。「そりゃあ『真風』だけに『新しい風』を、宙組に吹き込んでくれるだろうと」。シャレをまじえ、期待感を表現。新生宙組のリーダーとして、手ごたえを実感する日々だ。【村上久美子】

 ◆グランド・ロマンス「王家に捧ぐ歌-オペラ『アイーダ』より-」(脚本・演出=木村信司氏) オペラ「アイーダ」の宝塚バージョンとして、新たな脚本、音楽で、03年に星組で湖月わたる、安蘭けい、檀れいらが出演して初演。今回は12年ぶり再演。エジプトの若き将軍、ラダメス(朝夏)は、敵対するエチオピアを攻略。王女アイーダ(実咲)を捕らえるが、心を奪われ、婚約者アムネリス(伶美うらら)の侍女とする。アイーダの兄ウバルドに真風涼帆。

 ☆朝夏(あさか)まなと 9月15日、佐賀市生まれ。02年「プラハの春」で初舞台。花組配属。05年「マラケシュ・紅の墓標」で新人公演初主演。10年「BUND/NEON 上海」バウ単独初主演。12年6月、宙組へ。13年「風と共に去りぬ」でスカーレット役。昨年、全国ツアー「ベルサイユのばら」などで主演。今年2月、トップ就任し、3~4月に「TOP HAT」主演。AKB48・渡辺麻友が朝夏の「ファン」と公言。身長172センチ。愛称「まぁ」。