ドラマ「新宿野戦病院」が面白い。宮藤官九郎の脚本に小池栄子、仲野太賀(ダブル主演)とメンツから見て期待大だったが、その期待を優に超えてくる出来である。宮藤といえば今年の1月クールのドラマ「不適切にもほどがある」(ふてほど)でも話題になったが、本作は「ふてほど」以上に攻めた内容で楽しませてもらっている。

舞台は現在の歌舞伎町。トー横キッズに路上生活者、ホストに不法滞在の外国人と訳アリな患者が続々と救急で運ばれてくる。手術室では、元軍医のヨウコ(小池)が、岡山弁(母親の影響)と英語でテキパキと指示を出すというか、とにかくまくしたてる。生死をかけた緊迫あるシーンが続くと思いきや、心臓マッサージで患者に馬乗りになったヨウコに対し、やってきた患者の息子が「騎乗位?」と発するなどクドカン節ももちろん健在。ハチャメチャな設定と登場人物ながら、ホロリとくるシーンも多々あり、さすがクドカンといった満足度の高いドラマに仕上がっている。

そこで今回紹介したいのは、本ドラマに出演している橋本愛。子役やモデルを経て、朝ドラ「あまちゃん」で大ブレイク。その後も人気女優としてさまざまな作品に出演する。映画が中心なこともあり、意外にも一昨年のドラマ「家庭教師のトラコ」が民放ドラマ初主演。あまちゃん同期の有村架純や松岡茉優が主演している中、慎重にキャリアを築いてきた印象も受ける。

また、コラムなどで見せるその姿は、いわゆるスターのそれとは違い、芸術肌で繊細な一面も見て取れる。若くスターになった反面、いわゆるスター街道ではなく、ひとつひとつの役と向き合ってきたのだろう。

しかし、本作では「あまちゃん」の宮藤作品なのか、女優・橋本愛の新たな一面を魅せてくれる。昼はボランティア団体のエリア代表、夜は…とゴールデンタイムにはキワどすぎる内容だが、脚本に全幅の信頼があるのか、伸び伸びと役を演じる。清楚(せいそ)で繊細な彼女ももちろん魅力的だが、本作のようなぶっとんだ役もまたいい。今後の活躍に大いに期待する。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)生まれ、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開予定。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)