歌手石井聖子(41)が、ストーリー仕立ての3曲入りシングル「7cm(センチ)」を6月24日にリリースする。オフィスで居場所を失っている“お局”の心境や、年下男性社員からの思いに素直になれない気持ちなど、複雑なアラフォー心理を歌に込めた。歌手業と平行し、コスメ事業で接客に立つOLでもある。「働く現場のリアルを知っている私だから歌えるストーリー。仕事に恋愛に頑張る同世代に聴いてほしい」と話す。

**********

 1曲目の「局(TSU-BO-NE)」は、仕事一筋で生きてきたが、オフィスでの立場を追われたお局OLの胸の内を歌う。ハード路線のアップテンポなメロディーで「やってらんない」とぶちまける内容。甘いクリアボイスが持ち味の石井聖子にとって大きなチャレンジとなった。セクハラ上司への宣戦布告など、歌詞は痛快だ。

 石井 曲を最初に聞いた時は驚きましたが、よくぞ言ってくれたと思わせる歌詞に共感できて、すぐにこの曲のファンになりました。「女性が活躍する社会」というけれど、男性は何も分かってない。「あるよね、こういう状況」という、アラフォー女性が直面している窮屈さというか。この曲をカラオケで歌って、発散して楽しんでもらえたらいいなと。

 2曲目「Irony」は、そんな女性が偶然昔の彼氏を見かけたことをきっかけに、あの頃とこれからの自分に向き合う曲だ。

 石井 40年生きてきたら、誰にでも「あの時、素直にああしておけば良かった」みたいな後悔はある。そういう思いを経験して今があると思えば、後悔も大事。「そんな自分も許して愛せなくちゃ」という歌詞が好きなんです。

 パッケージタイトルにもなっている3曲目の「7cm」は、心のバリアーの高さを7センチヒールに込めた恋の歌。年下男性社員からの思いに素直になれないアラフォーOLが、殻を破って前向きになるまでを描く。透明感あふれるボーカルがよく似合う、しっとりとしたバラードだ。

 石井 王道の恋の歌ですよね。私自身も、恥ずかしがらずに真っ正面から歌いました。歌詞にもあるのですが、アラフォー世代は「はぐらかす」という術を身につけているんですよね。人生に夢以外の「責任」とか「役割」とかが出てきて、現実をうまく生きる術を身につけている。そんな女性が素直に恋する気持ちに気付いて「結末なんてもうどうだっていいの」と決意する展開も、この世代のたくましさを感じます。

 母親は「ラテンの女王」といわれた歌手で女優の坂本スミ子。火のような音楽の母親とは対照的に、石井は水のような音楽と評される。

 石井 母は血の気の多いラテン系ですから(笑い)、思ったことを口にするタイプ。周りが大変なのを見てきたので、私は引っ込み思案な方かな。でも、音楽が身近にあったのは母のおかげ。

 歌手業と平行して、コスメ事業でも活躍する“二足のわらじ”アーティストでもある。父、石井礼次郎氏は、ドクターコスメの元祖として知られる皮膚科専門医。家業の化粧品ブランドで商品開発を行い、自らデパートなどで売り場にも立つ。

 石井 OLの現場のリアルを知っている私だからこそ、今回のような、働く女性のストーリーを歌えるのだと思いたい。美容のお仕事をしていると、50代、60代で魅力的に輝いている人に多く出会います。皆さん、仕事もプライベートも、人生の濃度が濃い。私も40代。このアラフォーをどう駆け抜けるかで、後々の差が出てくるんだと思います。思い切りエンジョイしたいですね。

◆石井聖子(いしい・せいこ)本名同じ。1973年(昭48)9月20日、東京都生まれ。上智大文学部在学中、篠山紀信氏による「週刊朝日」女子大生シリーズの表紙を飾り、スカウトされる。96年、岡本真夜プロデュースによるシングル「ANNIVERSARY」でデビュー。血液型B。