はなわが何者なのか分からなくなった。

 はなわといえば03年、「SAGA さが♪」の歌詞で知られる、故郷を自虐した楽曲「佐賀県」で人気を博した。04年には「伝説の男~ビバ・ガッツ~」を発売し、お笑い番組に多数出演していた。

 03年にテツ&トモとタッグを組みNHK紅白歌合戦に出場した経験もあるが、芸能界での立ち位置はあくまで“歌ネタ芸人”だったはずだ。

 そんなはなわが先月、13年ぶりにCDシングルを発売した。「お義父さん」というタイトルで、結婚15年が経った16年3月、妻智子さんの誕生日に贈った曲だ。YouTubeに公開したところ反響が大きかったことから、CD化が決まったという。

 はなわにとってのお義父さん(智子さんの父)は、智子さんが2歳のときに家を去った。智子さんは父についての記憶がなかった。

 「お義父さん」は、そんな義父に「あなたの娘をもらってもう15年です」「あなたの娘がどんな人生を送り もがき苦しんできたかを 今僕はあなたに伝えたいのです」「もしよかったらいつか孫を見に来ませんか」と優しく語りかける歌詞だ。はなわの人柄が伝わってくる。

 先日行われた「お義父さん」リリースイベントを取材したが、心を揺さぶられた。失礼な物言いになってしまうが、まさかお笑い芸人の歌にこんなに感動するとは、思っていなかった。商業施設内でのイベントだったが、足を止める人が続出し、会場は満員だった。

 それだけではない。はなわは現在、男装アイドルユニット「風男塾(ふだんじゅく)」をプロデュースしている。グループのプロデューサー業も行っているのだ。

 すっかり音楽家になったはなわ。取材時、紅白出場を狙っているか? と聞かれると「最大の目標はそこ」と真剣に答えていた。14年ぶりの紅白出場も、あるかもしれない。