平成29年度文化庁芸術祭で松本幸四郎(75)が主演舞台「アマデウス」で演劇部門の大賞を受賞した。芸術祭は関東地区と関西地区に分かれて、10月から11月にかけて開催されており、「アマデウス」は9月下旬に東京で幕を開け、芸術祭開催中の10月は大阪で公演だったため、関西地区での参加、大賞受賞となった。幸四郎は15年にも主演ミュージカル「ラ・マンチャの男」で大賞を受賞している。この時は帝国劇場での公演で、関東地区での受賞だった。2度目の大賞受賞だが、来年1月2日には2代目松本白鸚を襲名するため、幸四郎としては最後の受賞となった。

 「アマデウス」は幸四郎襲名直後の1982年に初演された。以降、幸四郎はモーツァルトと対立する宮廷楽長のサリエーリを演じ続け、公演回数も450回を超えた。受賞理由で「さらなる深化と洗練を感じさせる圧巻の演技を見せた。老境と壮年期を行き来する鮮やかな変化、天才モーツァルトへの燃えたぎる嫉妬、サリエーリの姿を通して、人間の業や矛盾を見事に浮かび上がらせた。称賛すべき芸」と最大級にたたえた。

 1月の高麗屋3代襲名で、長男市川染五郎が10代目幸四郎、孫の松本金太郎が8代目染五郎を襲名する。白鸚となる幸四郎は「アディショナルタイム人生になったけれど、点が入るかもしれないし、逆転するかもしれない。それぐらいの意欲でやりたい」と謙虚に話していたが、アディショナルタイムどころか、今もなお、芸の高みを歩み続けている。