お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎(40)が、自らの日常を元に初めて描いた漫画「大家さんと僕」(新潮社)が、累計発行部数20万部超えと大ヒットしている。矢部がニッカンスポーツコムの単独取材に応じたインタビュー第2回は、漫画家デビューのルーツとなった父の絵本作家やべみつのりさんの存在、そして東京都立保谷高の同級生で、常に刺激を受け続ける相方入江慎也(40)と始めたお笑いの原点を振り返る。

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 矢部は子どもの頃、父みつのりさんが絵本を描く創作風景を見ていたという。絵本作家を目指したことは1度もなかったが、漫画家になった今、父の血筋を受け継いだと感じている。

 矢部 お父さんの芸術性が大きかったですね。「初めてなのに、何でこんなに描けるんですか?」と、よく言われるんですが、説明できない。多分、お笑いの才能のある人も「なんでそんなにボケを思い付くのですか?」と言われても、説明できないと思うんですよ。今になって思うと、そういうところ(父が取り組む芸術の世界)にたどりついた感が、やっぱりありますよね。美術大にも行っていないですし(芸術は)正解もない世界ですから、父の姿を見ていたからこそ、難しいかなと思っていました。

 -不惑を過ぎて、父と同じ道を歩き始めた

 矢部 いろいろあって(人生の道を)回って…いろいろ経験したこと全部が漫画につながっていると思って。ここ何年か(俳優として出演した)映画の仕事をして、人としゃべって、作り方みたいなのを見ていたのもあるし、バラエティーでやった仕事も、物を作る客観性の部分でつながった。

 -父の反応は?

 矢部 メチャクチャ、喜んでいますね。50冊くらい買って、いろいろな人に配って、その感想をメルマガみたいに毎日送ってくれる。今まで、そんなことはなかったですからね。

 相方の入江は交友関係が広く、人脈力をテーマにした著書を出版し、人脈や起業などに関する講演会を全国各地で展開している。矢部はいつも、入江の背中を見て刺激を受けてきた。

 矢部 入江君は、講演会とかメチャクチャやって、すごく行動していて、その方向で何歩も僕より先を行っていたと思うんですよね。僕も頑張らなきゃと思って、入江君に引っ張られるとともに、僕は僕の方向を考えなきゃいけないと思っていたのが、そっち(漫画)かも知れませんね。

 -人前に出ると緊張するというが、入江にお笑いに誘われた時、断れたのでは?

 矢部 嫌だって言えなかったんです(苦笑い)あと「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ系で91年12月から97年11月まで放送)とか見ていて楽しそうだったし。高校の時に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ系で85年から96年まで放送)で、ビートたけしさんの前でネタをやって、たけしさんがプロデュースする企画があって、入江君と行ったんです。そうしたら、たけしさんから「あんちゃん、戦時中の子どもみたいだな」とか、めっちゃイジられてウケた。

 -たけしに評価されて、その気になった?

 矢部 コーナー自体、2、3回で終わっちゃったんですけど「いけるんじゃないかな?」と。たけしさんに褒められたと思ったんですよ。今、思えば、いじられただけなんですけど…(笑い)すごい成功体験で、もっとやってみたいなと思っちゃったんですね。

 矢部は、入江と出会わなかったらお笑いを始めていなかったと感謝している。

 矢部 やって良かったと思います。やっていなかったら、何をしていたか分からない…そうしたら0ですもんね。僕、やっぱり独特の感じ(キャラクター)も含めて役者業も成立しているんだと思いますし、漫画もそうだと思うんですよ。

 -お笑いの現状は?

 矢部 ライブは毎月、やっていますよ。そこでも入江君の、チケットの手売り力が半端ない! 講演会で告知したら(講演会の)お客さんが来てくれるので、最近はスーツを着たサラリーマンが多い。「漫画を読んだ人は?」と聞いたら、2人くらいしかいなかった。でも、漫画を紹介するのに、大きな番組に出させていただくこともあります。

 -出て面白かった番組は

 矢部 AbemaTVの「ピーチゃんねる」(土曜午後11時)という、すごいお色気の生番組があって、ものすごくエロい。結構ハマって、チョコチョコ出させていただいて。漫画のことで最近、文化人として一般紙や雑誌の取材を受ける機会が多いのですが、取材の夜に女性のお尻を、すごく近くで見て興奮しているみたいな…すごい、いいバランスで(笑い)僕は、やっぱりこっちだな、こっちがあって(の漫画)だなと。そういうバランスが、すごい大事。結局、僕はそういうところから出てきていますし、緊張したら下半身を触ってしまうような人間ですから(苦笑い)

 -「ピーチゃんねる」で興味をひかれるところは?

 矢部 尻フェチなんですよ。胸より全然、お尻ですね。萌木七海ちゃんっていう身長175センチのグラドルの方がいて、脚線美からのお尻がすごくいいんですよね。企画で、そういう(尻に顔を接近する)コーナーがあって便乗させていただいて。全国の童貞のみんなが、家で見ている番組みたいなんですけど“レジェンド童貞”って呼ばれているんですよ。レジェンドは自分でなろうとしてなるものじゃない、気が付いたらなっているものだなと知り、すごい光栄ですよね。

 -本当に、童貞?

 矢部 そこら辺はノーコメントで…はい(苦笑い)

 -女性と縁がないと言っていたが?

 矢部 ないですよ(苦笑い)番組で1回、お見合い企画をやったことはありますけど「とりあえず募集してみたから来た。矢部さんのこと知らないんですけど」みたいな人が来て…。

 -ピース又吉直樹は、芥川賞を受賞後「先生」と呼ばれている。漫画家の先生になった裏で“レジェンド童貞”とは…

 矢部 又吉先生は「ピーチゃんねる」やらないでしょ(笑い)

 次回は愛する映画への出演含め近年、進境著しい俳優業を含め、クリエイター色を強める矢部が、今後の夢を語る。【村上幸将】