乃木坂46鈴木絢音(19)が出演する舞台「ナナマルサンバツ THE QUIZ STAGE」を取材した。クイズをテーマにした作品で、鈴木は明るいヒロイン役を好演していた。劇中では、公演ごとに、その場でキャストによる「ガチ」の早押しクイズ大会を実施。乃木坂46の中でも学力の高いメンバーの1人である鈴木は、取材当日に優勝を果たし、会場は大いに盛り上がっていた。

 原作は、「ヤングエース」で10年から連載中の漫画「ナナマルサンバツ」。昨年7月期には日本テレビ系などでアニメ化もされている。そもそも「ナナマルサンバツ」とは早押しクイズ形式の1つで、7問正解すると勝ち抜け、3問お手つきすると即失格というルールだ。かつてTBS系「史上最強のクイズ王決定戦」の準決勝などで採用され、数々の名勝負を生んできた由緒ある形式。同番組内で長束恭行氏が決勝常連の西村顕治氏を土俵際まで追い詰めた戦いは、いまだにファンの間で語りぐさとなっている。

 記者は当時小学生低学年だったが、同番組や日本テレビ系「アメリカ横断ウルトラクイズ」フジテレビ系「FNS1億2000万人のクイズ王決定戦!」はのちのちCS放送などでも視聴する機会があり、スポーツを視聴するのにも似た興奮を覚える(事実、歴代クイズ王の1人、長戸勇人氏は「クイズはスポーツ」と話していたという話もある)。同時に、視聴者参加型のクイズ番組が減ってしまったな、と実感する。

 前出のクイズ番組に加えて「クイズ タイムショック」「アップダウンクイズ」「クイズグランプリ」など、かつては各局がこぞって視聴者参加型のクイズ番組を放送していたが、現在は、特番などを除くと「パネルクイズ アタック25」くらいに限られてしまう。いちクイズファンとしては率直に寂しい。クイズ番組に問題制作として関わることの多い現代のクイズ王、古川洋平氏も、アイドル番組を中心にタレントとしての出演が増えてきた印象だ。

 一方で、11年まで放送された「クイズ!ヘキサゴン!!」をはじめ、「クイズプレゼンバラエティーQさま!!」や、「ネプリーグ」など、タレントが出演するクイズ番組は人気があるようだ。

 あるテレビ局の局員によれば、視聴者参加型のクイズ番組が減った理由はさまざまだという。また、クイズ番組に限らず、視聴者参加型の番組自体が減少傾向にあり、「スポンサーなどの兼ね合いもあり、ゴールデンで放送するにはまず視聴率が必要。制作サイドとしては、素人だと、タレントよりもいろいろと計算ができない部分がある」と話す。

 さらに、SNSなどの発達も1つの要因だという。「出演者のプライバシーも十分に守られず、番組内の行動などが原因で特定、炎上してしまう場合も考えられる。また、収録中のやりとりなども、一部参加者のSNSに洗いざらい書かれてしまうこともありえる。総じて、リスクとリターンが見合わないんですよ」と話す局員もいる。確かに、タレントのほうが一般人よりギャラはかかるかもしれないが、いろいろな意味で「計算」はきくし、テレビ局側の思惑もくみ取ってくれる可能性は高そうだ。

 ただ、「視聴者参加型でも、おもしろくなる企画があればいつでも放送する準備は整っているとは思う。理由はいろいろあるだろうけど、結局はテレビ局側が楽をしようとして努力をしなくなっただけではないか」と話す関係者もいる。「月曜から夜ふかし」や「家、ついて行ってイイですか?」など、一般視聴者をフィーチャーした人気番組もある。

 クイズ番組でも、昨年7月から放送されている「東大王」は、伊沢拓司氏や鈴木光氏らタレント性のある一般人を発掘し、タレント同士のクイズ対決番組が多い中で一石を投じたと言える。ただ、出演する一般人はほぼ「東大生」に限られており、門戸が開けているとは言えない。クイズの名門立命館大学をはじめ、他大生の中にも、そして大学生以外にも、多彩なクイズプレーヤーがまだまだ隠れていると思う。

 時代の移り変わりとともに、視聴者参加型クイズ番組にはさまざまな課題があるのかもしれない。ただ、「計算できない」視聴者同士の対決だからこそ見られる醍醐味(だいごみ)もあるはず。個人的な願いも込めてしまうが、番組制作関係者には、積極的にチャレンジしていただきたいと思っている。