フジテレビの連続ドラマが、好スタートを切った。

 9日スタートの沢村一樹(51)主演「絶対零度~未然犯罪潜入捜査」(月曜午後9時)の初回視聴率が10・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、12日スタートの山崎賢人(23)主演「グッド・ドクター」(木曜午後10時)は11・5%だった。

 「月9(げつく)」と「木10(もくじゅう)」、フジテレビの看板ドラマを枠の2つがそろって、2桁発進は16年7月期以来、2年ぶり。月9は桐谷美玲主演「好きな人がいること」の10・1%、木10は松嶋菜々子主演「営業部長 吉良奈津子」の10・2%だった。

 月9は若者向けの恋愛ドラマ、木10は大人向けドラマ。そんな単純にきめつけることができるわけではないが、2年前の2つのドラマは世間のイメージ通りだった。

 しかし、今回の2作は全然違う。「絶対-」はシリーズ第3弾で、第2弾までは上戸彩主演。今回は月9初主演となる沢村が主演だ。イケメンの“エロ男爵”が若い女の子とラブストーリーを演じるのかと問われれば、答えはノー。「沢村一樹が月9初主演!」などと騒がれたが、これは既に月9ではない。単純な犯人逮捕ものではない刑事もの。フジテレビじゃなく、どちらかといえば「相棒」シリーズなどのテレビ朝日の作品かと思ってしまうようなところもある。

 木10の「グッド-」も若手イケメン俳優の代表の山崎が、自閉症でコミュニケーションに能力に障害がありながら、驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群の小児外科医という難しい役を演じている。役者としての殻を破る、好演だ。

 さんざん、あおって書いてきて、いまさら申し訳ないのだが、もう月9だ、木10だという時代じゃないのだ。ネットでドラマが自由に見られる時代になって、リアルタイムで視聴する人間は、どんどん減っている。見る方には月曜の午後9時とか、木曜の午後10時という意識はなくなりつつある。作り手たちも、ドラマの枠のイメージにとらわれることなく、大胆な挑戦を見せている。

 現在の月9の第1作目と言われる、87年の「アナウンサーぷっつん物語」の編成担当のプロデューサーだった亀山千広氏(62)は、フジテレビ社長をへて昨年BSフジ社長に就任。

 月9の代名詞だった“トレンディードラマ”の第1作目と言われる88年の「君の瞳をタイホする!」のプロデューサーだった山田良明氏(71)はフジテレビ常務、系列の共同テレビ社長などをへて退任。今月、舞台「新・幕末純情伝」で舞台俳優としてデビューした。

 昭和の末期からの流れを引きずるドラマの時代は終わった。時代は確実に変わっている。それを突きつけられた、フジテレビドラマの好スタート。平成も、もうすぐ終わりだ。