映画「マルサの女」やNHK大河ドラマ「葵(あおい) 徳川三代」、マキノ雅彦名義で映画監督も務めた俳優津川雅彦(つがわ・まさひこ)さん(本名・加藤雅彦=かとう・まさひこ)が4日に心不全で亡くなっていたことが7日、分かった。78歳。今年4月27日に妻で女優朝丘雪路さんを82歳で亡くしたばかりだった。

 津川雅彦さんが公の場に現れた、最後の姿を目の当たりにした。朝丘雪路さんが死去したことを受け、5月に都内で会見に応じた時のことだ。津川さん自身も昨年から肺炎を患い、ほとんど歩くこともできない状態。キャスター付きのいすに酸素ボンベを転がし、鼻にはチューブを差した、痛々しい姿で会見場所に現れた。

 愛妻の最期を語る場なのに、座っていては失礼と思ったのだろうか。津川さんは会見場所に近づくなり、いすから立ち上がって歩こうとし、慌てた報道陣から止められる一幕があった。別居もしていたが、朝丘さんの病状の進行を見かねて、3、4年前から再同居していたという。結婚から45年。女遊びが盛んで、玩具会社の事業に失敗し、朝丘さん名義の自宅を売りに出すなど、迷惑をかけっぱなしだった朝丘さんへの、最後の罪滅ぼしのように思えた。

 会見の最後に、朝丘さんへの思いを聞かれた。「全てに感謝です。娘を産んだことも含めて。(借金返済のため)家を売ってくれたことも。僕よりも先に死んでくれたことも含めて」。長年連れ添った夫婦にしか言えない一言が、今も印象に残っている。【森本隆】