俳優寺尾聡(71)が、本年度の旭日小綬章を受章した。

劇団民芸の創設者でもある名優宇野重吉(88年没)の長男として生まれた。そして、俳優石原裕次郎(87年没)に託された。

「石原裕次郎さんとは10代の頃からの付き合いで、この世界でスタートする入り口。私の父が預けた。石原プロに10年くらいいたけど、好き勝手やらせてもらった。いろんな事を覚えて、俳優としての礎を作ってもらった。その後、晩年の黒沢明監督に会えた。僕の何%かを作ってくれた」。日刊スポーツ映画大賞、日本アカデミー賞の主演男優賞を受賞した映画「雨あがる」の小泉尭史監督(73)は黒沢明門下の兄弟子。「小泉監督と寺尾聡ですてきな作品を作りたい」と話した。

父・宇野重吉に対しては、素直に感謝の言葉を口にした。「100%、父である宇野重吉から教わった。外に出て教わった事はありません。外に出て、プロからいろいろ聞いても『あ、知ってる』『あ、聞いてる』。俳優になろうと思っていない頃から聞いてたことだった。自分の師匠であり、芝居の神だったのが、たまたま父だった。もう少し距離があれば、ちゃんとあいさつして教えてもらいに行ったんだけどね。父であり、師匠であり、芝居の神である宇野重吉のおかげ」と言い切った。

デビューしてから50余年。その軌跡を振り返り「自分の撮ったもので、多分、後悔だらけなんだろうけど、全部満足だらけ。やり直しがきかないものだから、後悔してもしょうがない。作ったもの全部、愛していきたい。自分のオリジナルが理解できるようになった。生き物だな、という感じがしている」と笑った。

人生100年と言われる時代がやってくる。「同い年くらいの名前が並んでいるのを見ると、西田敏行さん、石倉三郎さん、高田純次さんがいて、蛭子能収さんもいる。みんな、その人、その人。見た目の年齢も、生き方の年齢も、みんな違う。年の数じゃなくて、どれだけギュッと充実していられるかだと思う。若々しさというか、それがパッション。それがカッコイイじじいになること。後から歩いてくる人が『ああいうじじいに』と言ってくれれば、この世界の人じゃなくてもうれしい。毎日品行方正じゃなく、ダラーっと生きてますから。嫌なことは嫌って言っちゃう。だか、あちこちで評判が悪いんですけど」と笑った。

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◆寺尾聡(てらお・あきら)1947年(昭22)5月18日、神奈川県生まれ。 劇団民芸の創設者でもある名優宇野重吉(88年没)の長男。66年グループサウンズ、ザ・サベージのメンバーとして「いつまでもいつまでも」でデビュー。68年に俳優石原裕次郎(87年没)の門下に入り、映画「黒部の太陽」で俳優デビュー。81年「ルビーの指環」が大ヒットして「日本レコード大賞」「日本歌謡大賞」受賞。その後は映画監督黒沢明(98年没)に師事して映画「乱」「夢」「まあだだよ」などに出演して、00年の「雨あがる」では日刊スポーツ映画大賞や日本アカデミー賞の主演男優賞を受賞するなど、実力派俳優としての地位を確立。その一方で、独自のサウンドを追求した音楽活動を続けている。