国の重要文化財に指定されている旧奈良監獄が一般公開される「奈良赤レンガFESTIVAL」(25日まで)が23日、奈良市内で開幕し、イベントに先立ち「旧奈良監獄保存活用事業着工記念式典」が行われた。

旧奈良監獄は明治期に作られた5大近代監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の1つで、完全な形で残っているのは奈良のみ。1909年に誕生し、46年からは少年刑務所として使われた。17年2月に重要文化財に指定された後、同3月に老朽化で閉鎖されていた。今後、保存活用事業が正式に着工し、21年に資料館や監獄ホテルとして生まれ変わる。

イベント後援の吉本興業を代表してあいさつした西川きよし(72)は86年から3期18年、参議院議員を務めた。任期中には3年間、法務委員会に所属し全国の刑務所や収容施設などを視察した経験を持つ。その思い出から西川は赤面エピソードを披露した。

当時、訪れたとある女子収容所で所長から「絶対に(収容者に)声をかけないで下さい」と視察に際しての注意があったという。社会復帰のために労役に励む収容者の中で、スリッパを黙々と制作していた60代女性の手際に驚いた西川は「いやーお上手ですね。長いことやってはるんでしょう」と思わず声をかけてしまった。

言葉の意味を理解し「えらいことを言うた」と、直ちにおわびした西川に女性は「いいえ、人生誰でも失敗はあるもんですから」と諭されたという。その日は「なんか変な気持ちで帰らせてもらいました」と、思わぬ失敗談で式場を笑わせていた。完成を心待ちにした監獄ホテルには「(妻の)ヘレンと一緒に泊まりに来たい」と笑顔で話した。

式典には黒川弘務法務事務次官、荒井正吾奈良県知事、仲川げん奈良市長らが出席した。

この日は、ゆりやんレトリィバァや、おかずクラブらが出演したお笑い監獄ライブも行われ、多くの人が詰めかけた。

旧奈良監獄の設計者、山下啓次郎氏を祖父に持つジャズピアニストの山下洋輔(76)の記念コンサートも開催される予定だったが、22日に自宅階段から転落して全身打撲のケガを負ったことを受け、中止となった。