5月上席の新宿末広亭を皮切りに、落語芸術協会(三遊亭小遊三会長代行)の新真打ちの披露興行が始まる。新真打ちは異色の経歴を持つ3人だ。先日、昇進会見が行われた。

瀧川鯉斗(35)は元暴走族で、「おとこ気は誰にも負けない。おとこ気のある落語家を目指してやっていきたい」とあいさつした。やんちゃなキャラクターは演じやすいらしいが、見た目は落語界きってのイケメンと言われている。「若だんな」が登場するネタをやってみたいそうなので楽しみだ。

入門したばかりのころ、小遊三に付いて地方に行くことがあったそうだ。当時を振り返り、小遊三は言った。

「親分を子分が守るみたいな目つきで(ガードして)新幹線に乗せてくれました。ありがたいんですけど『いつも笑ってろ』とアドバイスしました。そしたらそのアドバイスを忠実に守って、お通夜でも笑ってます」

橘ノ双葉あらため三遊亭藍馬(38)は、元力士と結婚し、8歳、5歳の2児の母親だ。「絶賛子育て中なので大変なんですが、子供に教えてもらうこともある。緊張が伝わってしまってごめんねと謝った時、子供から『お母さんは高座に上がるといつも笑ってるじゃない』と言われて癒やされた」と、こちらもほっこりするエピソードを聞かせてくれた。

立川吉幸(45)は立川流から芸協に移籍し、前座修行も2度経験している。よく通る大きな声が特徴で、吉幸は「自分の落語会で『うるせえ』と言われたことがあるんですよ」とのこと。キャリアは長いが「年金をもらう前に得意ネタを作りたい」と謙虚だ。大の趣味が競輪で、場外車券場で予想会も開くほど。会見でも競輪トークが止まらなかった。

小遊三は3人に期待しながらも、厳しい言葉もかけた。「今の時代、(落語家の)人数が増えちゃって、競争が大変。よほど気を引き締めていかないと。覚悟をしていただきたい」。

確かに、トリを取ったのは襲名の時だけという落語家は何人もいるほど、競争は厳しいし、自分なりの努力も必要だ。会見でも「披露興行以降もトリを取れるようになりたい」という言葉もあった。襲名は、出発点でもあり通過点でもある。そうあらためて感じた。