来年2月14日付で退団する宝塚歌劇団の月組トップスター珠城(たまき)りょうが17日、大阪市内で退団会見を開き、号泣しながら昨秋に月組が新体制になったことがきっかけと話した。近年では天海祐希に次ぐ9年目スピード就任。16年9月就任で、在位約4年半、本拠地8作で退く。

昨年4月「夢現無双」で、2番手として支えてくれていた美弥るりかが退団し、新しい月組が誕生した。涙で声を震わせつつ退団を意識した時期を明かした。

「今まで耐えて、背負ってきたもの、少しずつ…おろしていっていいのかなって…思うようになった」

白のスーツ、グレーのベストに淡いブルーのネクタイ姿。退団を意識すると同時に、次世代へのバトンも視野に入ってきたことで「これからは(新体制の)組を今まで以上に引っ張っていかなきゃいけない」とも感じていた。

組子には前日の稽古前に、相手娘役の美園さくらには、今年1月に伝えたという。「私も(先に退団発表した雪組トップ)望海(風斗)さんと一緒で、自らが先に泣いてしまった。上級生の…」と、ここまで言うと、号泣。組メンバーを思い、涙が止まらず「こんなに泣く予定じゃなかった」と照れながら「涙もろいので用意してきた」と言うハンカチで目元を抑えた。

「男役10年」と言われる劇団にあって、9年目で頂点に立った珠城は、17年正月公演「グランドホテル」でお披露目。以来、海外ミュージカル、大作が続き、小川友次理事長も「まっすぐな性格で、プレッシャーもあったと思うが、真摯(しんし)に正面からぶつかってくれた。頭が下がる思いです」とねぎらった。

珠城も「トップスターは孤独といいますが、いつも組のみんなに支えられ、孤独を感じたことはなかった」と感謝。後輩に向けては「何かを得たいと思えば、120%の努力と100%の強い意志、60%の勇気があればきっと、目標に近づいていける」とメッセージを送った。

就任時から、名前があがった大先輩の天海祐希については「私は比べものにならない。失礼だから、やめてくれと思っていました」と苦笑。ただ、中学時代はハンドボール部主将を務めるなど“体育会系気質”の珠城は「もう、全力で、がむしゃらに、ただ走ってきた」とトップ就任からを振り返った。

172センチ長身と、男役としては恵まれた体格を生かしたダイナミックなダンスも武器。下級生時代から抜てきが続き「シンプルな衣装で、ストンと立っていられることが、男役としての完成」だと目指してきた。

トップの就任が早く、通常任期なら、これからトップに就こうとするスターもいる学年、14年目直前での退団になる。「もっと長くいたら、違う景色も見えたかもしれない。でも私はすごく凝縮した濃い経験をさせてもらい、密度の濃い時間を過ごさせてもらいました」と前向きに話した。

トップ経験は「人間として豊かになりました。つらいこと、苦しいこと、悲しいこともありましたが、この先の人生で、これを乗り越えられたことは大きかったと思える。つねに人の気持ちに寄り添える人でありたい」とも感じている。

長年、応援してくれたファンへの思いを聞かれると、再び、号泣した。「これ…泣いちゃう」と言い、再びハンカチを顔に。直近の名古屋・御園座公演「赤と黒」が、新型コロナウイルスの感染拡大により、途中で中止になったこともあり「どんなにつらい時も、一緒に耐えて、闘ってくれたファンの方、存在すべてがなかったら、私は今、ここにいないです」と、おえつしながら深謝した。

退団後については「次のステージで進む大きな1歩を踏み出していきたい」と言いつつ「(活動継続は)まだ何も決まっていません。最後まで男役として追求していきたい」と話すにとどまった。

恒例の結婚予定への質問には「月組のみんなからも聞かれるから、おもしろい答えを」と言われていたことを明かし「ああ、そういえば(てのひらの結婚線を見て)ないですね~。これが私の限界です」と笑わせていた。

退団公演は11月13日に兵庫・宝塚大劇場で開幕予定の「ロマン・トラジック『桜嵐記(おうらんき)』」「スーパー・ファンタジー『Dreamer Chaser』」。東京宝塚劇場公演千秋楽の来年2月14日をもって退団する。