新型コロナウイルスによる肺炎で3月29日に70歳で亡くなった志村けんさんが映画「キネマの神様」(山田洋次監督)で演じる予定だった主人公を、志村さんと多くの共演経験がある歌手沢田研二(71)が演じることが15日、分かった。配給の松竹が発表した。14年ぶりに映画出演する沢田は「志村さんの、お気持ちを抱き締め、やりとげる覚悟です」とコメントした。

志村さんと沢田は「8時だョ! 全員集合」「ドリフ大爆笑」などで何度も共演し、01年から文化放送「ジュリけん」でトーク番組を持つなどした仲。かつて同じ事務所の先輩、後輩だった関係もあり、気も合ったようだ。沢田は山田監督の「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」に出演したこともあり、縁が重なった。

同作は、映画撮影所で夢を追いかけた主人公ゴウを描いた物語。プロデューサーの房俊介氏は「山田監督は『志村さんとは違うゴウちゃん。沢田研二さんならば、別なゴウちゃんの魅力を引き出してくれると確信しています』とおっしゃっています」と山田監督の言葉を代弁した。志村さん所属のイザワオフィス井澤健社長も「長年親交のあった沢田研二さんがご出演されると聞き、志村けんも大変喜んでいると思います。作品の完成を心待ちにしております」。

志村さんは菅田将暉(27)とダブル主演し、主人公の過去を演じる予定だった。全体は3月1日にクランクインし、志村さんは4月からの撮影に入るはずだったが、体調を崩し出演を辞退した。

現在、緊急事態宣言発令を受けて撮影は中断しており、再開時期はまだ見えない。当初予定していた12月公開予定を見送り、来年公開で調整していくことになったが、沢田の出演も決まり、スタッフ一同は前向きに製作を見すえている。このほど、志村さんへの思いを表したメッセージビジュアルも公開された。

○…コメディアン以外でも志村さんの活躍の幅広さがあらためてクローズアップされている。今月、NHK連続テレビ小説「エール」で作曲家小山田耕三役で登場、出演時間は短いながら存在感を示した。大の音楽好きだった志村さんが70年代後半から音楽専門誌に執筆していたレコード評が復刻掲載されたり、かつての著書がベストセラー入りするなどしている。多才だった志村さんだけに、「キネマの神様」での初主演ぶりが期待されていた。また、愛飲の焼酎に注文が殺到するなどの現象も起きている。