宝塚歌劇で日本舞踊の名手として知られる専科の松本悠里(ゆり)さんが来年1月、東京宝塚劇場の月組公演を最後に退団することが発表されました。入団は1957年(昭32)ですから、実に64年にわたるタカラジェンヌ人生に幕を下ろすことになります。

宝塚の伝説の人である春日野八千代さんは12年に96歳で亡くなるまで宝塚に在籍していました。春日野さんに憧れ、その相手役も務めたこともある松本さんは89年に理事に就任し、昨年から特別顧問となり、歌劇の功労者をたたえる「宝塚歌劇の殿堂」に現役生から唯一選ばれた大ベテランでした。

松本さんの真骨頂は踊りにあります。5歳の時から日舞を習い、中学生の時には名取になりました。私が初めて松本さんの踊りを見た時、彼女は40歳前後だったはずですが、それから40年、しっとりとした舞い姿はいつも華やかで、時には童女のようなかわいらしさに息をのむほどです。まさに宝塚のレジェンド(伝説的な人)でした。

海外公演も65年のヨーロッパ公演をはじめ、計9回と歴代最多の参加ですが、彼女の踊りは海外のファンにも大人気でした。松本さんは「すばらしい思い出を胸に卒業できることを幸せに思います」とコメントしていますが、64年におよぶ「歌劇団生徒」からの「卒業」には歴史を感じます。