2014年(平26)で起きた大規模デモ「雨傘運動」以降、民主化運動が続く香港社会を描く香港・日本合作ドキュメンタリー映画「BlueIsland 憂鬱之島」(チャン・ジーウン監督)の製作関係者が13日、香港と日本とをリモートでつなぎ、会見を開いた。

会見には、香港から製作のピーター・ヤム氏と、日本側プロデューサーを務める配給会社太秦の小林三四郎社長が参加した。

質疑応答の中で、ヤム氏は、香港で20年7月1日に国家安全維持法が施行された前後で、何が変わったか? と聞かれると「大変、デリケートな問題。どういうふうに変わったかという話を(リモート会見の中で)共有するのは難しい」と複雑な心情をのぞかせた。この日の会見に先立ち、小林氏からは「英語での(ニュースの)配信、動画の直接のアップは避けていただきたく思います。また動画をアップする場合は事前にお知らせいただけますと幸いです」とのアナウンスもなされた。国家安全維持法を公布した、中国政府の存在を強く意識せざるを得ない現状をかいまみせた。

ただ、ヤム氏は「こうした状況下で日々、危険や恐怖を感じることはあるか?」との質問を受けると、せき払いをしつつ「もちろん施行されたから留意しなければいけないことはたくさんあるが、今の時点で(身辺を)脅かされたりはない。今後のことは分からない」と香港の現状を語った。亡命する可能性について問われると「香港の人々が60、70年代に移民したことはある。それは子どものために移民をしたと考えています」と答えた。その上で「毎日、いろいろな人が逮捕されたり、裁判にかけられている。多少の恐怖みたいなものは、常に感じていると思います。でも、クリエーターとして責務を果たしたい」と本音を吐露した。

国家安全維持法が映画製作に何らかの影響を及ぼしているか? とたずねられると「今、コロナの影響で香港は非常に高い失業率があり、多くの人が職を失っている。コロナの影響で、ロケが撮れなくなった。一方、政治的な理由で難しくなったかと言うと、そうではない」と説明。政治的な理由ではなく、コロナ禍が製作の障害になっていると明らかにした。

ヤム氏は会見の最後で、香港の現状を踏まえての、製作者としての思いを訴えた。

「香港の素晴らしいところは、ゴチャゴチャしたところ…いろいろなところから、いろいろな人がやってきて、どんな人がやってきても楽しく生活できるところ。それは、とても大切だと思う。香港が国際都市であり続けることを、切に願います。私たちが経験していることは、何も特別なことではない、歴史的にいろいろな国や人が、同じような経験をしている。東欧で起きたこともそう…いろいろなことを経験したにもかかわらず、クリエーターは一生懸命、声を上げている。それは同じ。我々も変わらず映画を撮り続けていこうと思う」

会見は約1時間に及んだ。当初、会見に参加予定だったプロデューサーの1人、アンドリュー・チョイ氏は香港国外にいるが、諸般のリスクを考慮して不参加。チャン監督も撮影を終えて編集に没頭しており、参加しなかった。