昨年5、6月に予定されながら新型コロナウイルス禍で延期になっていた、ワハハ本舗の全体公演「王と花魁」(おいらん)が、10月28日から全国13カ所17公演が行われることが決定した。3度目となる緊急事態宣言が今月31日まで延長が決定する中、全体公演にかける思いを柴田理恵(62)梅垣義明(61)ポカスカジャン大久保ノブオ(54)と主宰の喰始氏(73)に聞いた。全5回にわたって紹介する。

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喰 正直言って、いろいろな案が出ました。去年の10月にやろうかという案も出たけど、まだまだ収まりそうもないから今年の秋にしたんですよね。ところが、まだまだでしょう。本当に先が見えない状況なんだけど、いろいろな対策をして公演をしようと思ったんです。ひたすら春を待って冬眠するだけでは、気持ちがすさんでいくから。内容は、去年やろうとしていたものとは変わります。和っぽいもの、ワハハ風歌舞伎ができたらいいなと思っていたんです。怪獣歌舞伎とかヘビメタ花魁とかもやるんですが、唐十郎、つかこうへいのパロディーもあったらいいなと。いろいろな要素を入れ込もうと思っています。

柴田 個人的には、コロナで最初は全てがストップしました。仕事もなくて、ずっと家にいて片付けをしたり、こんなに暇なんだからと犬を飼ったりしました。徐々に仕事が戻ってきたけど、完全には戻っていません。去年の10月に舞台を1本やって、それで地方公演を回ったんです。久しぶりに舞台に立って、本当に救われたと思いました。こんなに舞台って、いいものだったんだなって。

去年の8月くらいになって、やっと動き始めた時に芝居を見に行って思ったんですよ。ワーッ、生の実演、演劇というものは本当にいいものなんだなって。しみじみ思いました。実際に自分でやった時も、スタッフさんたちがコロナ対策にすごく気を使ってくれてありがたいなと。我々が稽古をしている時も、制作の人たちが、細かく消毒とかに気を使ってくれる。見に来てくれる人も、席が1つとびだけど、こんな時でも来てくれるんだなって。このコロナで、自分が芝居を始めた時の原点に戻れるというか、そういう気持ちになれたのはよかったのかなと思います。コロナがいいとは、言いませんが。

それで、今はなるべく芝居を見に行くようにしています。今まで、なかなか見に行かなかった、例えばアーサー・ミラーの「セールスマンの死」とかね。そういう、なかなか見に行かないものまで見に行きました。木下順二さん(戦後のリアリズム劇作家)とかも見に行って、やっぱり面白いんですよ。でも、いろいろなものを見に行く中で、やっぱりワハハって言うのは唯一無二だなとしみじみ思いました。あんな風にものを何も考えず、アハハって笑って、何も残らない。こんなのはうちだけだから、やっぱりやらなくちゃという気持ちがより強くなった感じです。

(続く)

◆ワハハ本舗(ほんぽ) 84年、東京ヴォードヴィルショーの若手だった佐藤正宏、柴田、久本雅美、喰氏によって旗揚げ。現在は複数のセクションがあり、猫ひろし、正司歌江、ウクレレえいじらが所属。バラエティー形式の公演で人気を集め、下ネタも多い。06年のNHK紅白歌合戦でDJ OZMAに、裸に見えるスーツを貸し出したことも話題となった。