佐藤二朗(52)が5日、都内で、原作・脚本・監督・出演を務めた映画「はるヲうるひと」公開記念舞台あいさつに、主演の山田孝之(37)、共演の仲里依紗(31)坂井真紀(51)と出席した。

閉鎖された離島の置き屋を舞台に、現状にもがきながら生きようとする人々を描く。佐藤は「間違いなくみんなが本気でやった(作品)。自分が生きるために生傷を抱えながら、簡単には上れないような山を必死に登り詰めるような芝居を、有名無名にかかわらずやった作品です」。コロナ禍で公開は約1年遅れたが、その間に韓国の第2回江陵国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞し「書くことを続けてきてよかったと励みになった」と語った。

佐藤主宰の演劇ユニット「ちからわざ」で2度上演された舞台を原案に、映画化。山田は、佐藤演じる長男・哲雄の支配におびえて生きる得太を演じた。精神的に追い詰められるシーンも多く、役柄に思いをはせると「これだけ多くの人が見てくれたことがうれしい。心に傷を作ってしまったかもしれないけれど、僕も得太も救われた気持ちです」と話した。

舞台版では佐藤が得太を演じた。佐藤は「舞台の時は二朗さんが得太に寄り添ったけど、映画では僕が寄り添わなきゃと思って(オファーを)受けた」という山田の話を紹介。「バカなんじゃないかと思ったけど、現場ではどう考えても本気でそう思っているとしか思えない現場の居方だった。クライマックスのあるシーンでは、カメラが回っていないところでも一日中ずっと泣いていた」と、山田の全身全霊の演技を振り返った。

撮影は3週間で集中的に行われ、撮影現場と宿泊先も至近距離だったという。仲は「役になっていなきゃいけない環境だった。普段へらへらしている私でも、結構きました」とつらかった様子。山田は撮影地の海辺で「ああ、ここから出られないのかと、どん底まで落ちて」としみじみ。滞在中に仕掛かりの仕事をこなす予定だったが、「この仕事が終わるまで無理、と言ったら怒られました」と苦笑いした。