視聴率トップを独走するテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜午前8時)の中でも、話題になっているのが、俳優で気象予報士の片岡信和(35)が担当するお天気コーナーだ。わかりやすい気象情報はもちろんだが、毎日コーナー終わりに紹介するストレッチが評判だ。

単なるストレッチではなく「いないいないばぁ腹筋」や「エイエイオー スクワット」「イライラ飛んでけ~横っ腹」などなど、わかりやすくおもしろい演出がヒット。番組出演者がみんなで楽しみながら挑戦するなど、番組の一体感にも貢献している。

このストレッチを書籍化した「かたおか気象予報士の毎朝10秒! 楽しくお天気ストレッチ」(幻冬舎刊)が3月に発売。初版は8000部だったが、重版が次々にかかりついに8万部を突破した。片岡は「1万部を超えたあたりから想像を超えています。街中で声をかけられ、『見てますよ』ではなく『読んでますよ』と言われるようになりました」。

放送は毎日なので、日々、新しいストレッチを紹介する。誰もが枯渇を心配するが「毎日、10分間考えるようにするのですが、2時間かかっても出てこないことがあります。でも、最近はゾーンっていうのですか、シンガー・ソングライターの方がよく音が降ってくるって言われるように、次から次へと振付がふってくる状況です」と胸を張った。

最初から、現在の人気コーナーになったわけではない。片岡の登場は20年4月期から。最初は、普通の生活ワンポイントアドバイスなどを伝えていた。だが、すぐに、1回目の緊急事態宣言が東京都などに発令される。時期はお花見日和で、全国的には出歩ける地域もあったが、基本は“おうち時間”に変わっていった。「自宅にいたら運動不足になるじゃないですか。だから、期間限定で、ストレッチをやってみようということになりました」。

最初のストレッチを披露したのが20年4月16日。現在みたいな演出はなく、ごく普通の基本的なストレッチだった。続けるうちに、評判が上がっていった。

「それなら楽しくやろうということになりました。普通のストレッチはほとんどの人が知っている。それなら、視聴者の皆さんが楽しんでもらえるように、趣向を凝らすことに力を入れていきました」。続けるうちに、コメンテーターの玉川徹氏も積極的に挑戦するように。最初はいすにすわりながらだったのが、机の前に立つようになり、カメラも玉川氏の顔を最後にぬくという、今のスタイルになった。「玉川さんだけでなく、羽鳥さんも斉藤アナも、スタッフのみなさんがストレッチをやるようになってくれたのがうれしいです」。

06年にテレビ朝日系「炎神戦隊ゴーオンジャー」で本格的に俳優デビューした。以後も、ドラマや舞台、ラジオパーソナリティーのほかCDデビューも果たすなど、マルチに活躍していた。そんな中、自然災害や大地震が起きると、撮影が止まったり、放送が延期されることがあったという。「仕事が奪われるのがつらくて。役に立つ人間になりたいと思い、災害の時にお役に立てればと、気象予報士の勉強を始めることにしました」。

文系の片岡にとって試験は難関だった。「30歳を過ぎてからのサイン、コサインというのはつらかった。文系の人間にとっては、ほぼ物理ですから」。1度はあきらめたが、再度挑戦。1日の勉強時間を2時間と決め、2年間かけて、1500時間は受験勉強に費やした。努力の結果、19年に気象予報士の試験に合格した。

合格後に所属事務所も動き、現在の仕事を得た。役者も並行してやっているが、最優先は「モーニングショー」だという。「役者なので物理的な時間があえば、どんな役もやってみたいです。でも、このお天気キャスターを休んでまで、役者の仕事をやろうとは今は思っていません」。

そういえば、熱意のあまり片岡は昨年、夏休みを取らなかったという。「取るのを忘れてしまいました。僕の宝物がモーニングショー。許される限りやっていきたいです」。【竹村章】

◆片岡信和(かたおか・しんわ)1985年(昭60)7月30日、東京都出身。中大3年の時に芸能界入りし、06年「炎神戦隊ゴーオンジャー」で本格的に俳優デビュー。ドラマ「京都地検の女」「広域警察」など刑事役で活躍。15年に初アルバム「birth」でCDデビュー。19年に気象予報士試験に合格し、20年から「羽鳥慎一モーニングショー」のお天気キャスター。