窪塚洋介(42)が14日、東京・渋谷のユーロスペースで行われた主演映画「全員切腹」(豊田利晃監督)東京初日舞台あいさつで「1回、死んだと思う」と振り返った。

「全員切腹」は、明治初期に「井戸に毒をまいて疫病を広めた罪」で切腹を命じられる、ある浪人を描く。窪塚は浪人を演じ、切腹し、渋川清彦が演じる介錯(かいしゃく)人に首を飛ばされるシーンを演じた。

豊田利晃監督(52)は、切腹のシーンで窪塚の顔色が青くなり、見た人から「CGですか?」と聞かれたと明かし「(色が青いのは)血管で、息を止めているから顔が青くなっていく。撮影が終わったら体が硬直して、窪塚が動かなくなった」と説明。窪塚は「1回、死んだと思います」と苦笑い交じりで振り返った。

「全員切腹」は、豊田監督が19年「狼煙が呼ぶ」、20年「破壊の日」に続き、東京オリンピック(五輪)に揺れる東京で映画館を震わせる極音映画の最新形として、クラウドファンディングも利用して作り上げた26分の短編映画。撮影は2日間で行われた。豊田監督は「スタッフは、ほぼ寝ずに撮影という感じ。日光江戸村で長屋や江戸のシーンを撮った」と撮影を振り返った。

その上で、2日目の切腹シーンでの、窪塚とのやりとりを明かした。

「2日目の切腹のシーンで、窪塚洋介は長ぜりふを全部、覚えてきている。切腹シーンを1カット、長ぜりふの後に撮る。(窪塚は)『僕はセリフ、大丈夫だけど、もし血の事故とかがあってNGになったら困るから、カット割ったらいいんじゃないですか?』と言うけど1カットで行くと」

そして、切腹シーンへのこだわりを熱く語った。

「切腹シーンって、おなかに刀を突きつけた後、顔にパーッと寄ってカットを割る。いろいろ、映画を見たけど、こういう切腹シーンは初めてだと思う」と胸を張った。

窪塚は「(撮影場所が)電波が届かない、なくなっちゃう山だったので、いやが応でも集中する。スマホがなくなった時の自由さ、集中力がここまであるのかという、張り詰めた中で芝居させていただいた。(豊田監督は)研ぎ澄まされた掛け声を出される方で、腹切るまで3回、通しでやって、腹切りは1チャン」と切腹シーンを振り返った。その上で「死んじゃったんで、すごい興奮していた。東京で1本、予定があるからと早く出て、午後9、10時に大阪の自宅に帰っても…寝られない。アドレナリンが出ちゃって」と笑みを浮かべた。

豊田監督は、映画のタイトルについて「思い付いたのは去年のこと。まさかオリンピックをやって、コロナがこんなに増えると思わなかった。だから誰もタイトルの意味を問わない。みんな分かっている。その通りだろうと」と説明。その上で「それだけの映画じゃなくて、この国のトップだとかリーダーに向けるだけじゃなくて、侍が儀式の中にある切腹で責任を取る…個人に責任を取っているのかと自分自身にも問いたかった」と熱く語った。

窪塚も「自分って書くと、自由の分身って読めるなと思って。こんな時代に、なお自分らしく、なるったけ自由に人生を生きたいと思う人たちの、何かの支えだったり道しるべのようなものに、この作品があれたらうれしいと思います」と観客に呼びかけた。