片山慎三監督(40)が11日、16年の「新感染 ファイナル・エクスプレス」などで知られる、韓国のヨン・サンホ監督(43)と、都内からリモートで対談した。

片山監督は「パラサイト 半地下の家族」で20年に米アカデミー賞作品賞、監督賞などを受賞した、韓国のポン・ジュノ監督の助監督を務めており「韓国映画が大好き」と笑みを浮かべた。その上で「新感染 ファイナル・エクスプレス」、20年の「新感染半島 ファイナル・ステージ」といった、韓国映画の大作を手掛けたヨン監督に対し「こんなところで自分が話をしていいとは思えない、雲の上の存在」とたたえた。

一方、ヨン監督は、片山監督が手掛け、WOWOWで5月に放送された連続ドラマW「さまよう刃」を見たと明かし「日本の知り合いのプロデューサーから、片山監督の作品を必ず見るように言われ『さまよう刃』を拝見し、大ファンになった」と口にし、片山監督が自主製作した19年の初長編映画「岬の兄妹」も見たと語った。この日、韓国で開催中の第26回釜山映画祭ニューカレンツ(新人監督によるコンペティション)部門へ出品され、ワールドプレミア上映された、片山監督の新作映画「さがす」(22年公開)も見たという。

ヨン監督は「さがす」について「最初のシーンから引き込まれた。映画全体が監督のビジョンに染まっている作品を見るのは幸せ」と絶賛。「スリラーが大好きで日韓、世界の歴史的なジャンル、作品を見てきた。間違いなく言えるのは、大好きな作品の1つとなる可能性が高いということ。伝説のスリラー作品の1つに、この作品を挙げる可能性はあるだろう」とまで口にした。釜山映画祭での評判についても「『反則だ。新人監督のカテゴリなのに、もう完成している』などと、すごくいい反応」と紹介した。片山監督は「韓国は映画、ドラマを含め世界に評価されている。それは観客も、ちゃんと見ていて、面白い作品がヒットしているからだと思う。韓国の目の肥えた方に褒めていただき、すごくうれしい」と喜んだ。

集まった日本の取材陣の中から、片山監督には日本映画界が韓国映画界のように世界で評価されるためには何が必要か、ヨン監督には同世代の片山監督と、今後、どう切磋琢磨(せっさたくま)していきたいか? と質問が出た。片山監督は「面白いものを作るという意識ではないですかね。キャストのバリューに頼っている部分が多い。内容とか、画、ストーリーの力でヒットさせられるような映画を作るのが、すごく重要。ヨン監督の映画のように誰が見ても楽しめて、共感できるような作家性と興行が両立する作品。(今の日本は)作家主義か商業主義かが、分かりやすく偏っている」と日本国内の映画事情を踏まえ、語った。

一方、ヨン監督は「日本の映画業界に関して話すと、片山監督のような監督に果敢に援助すれば良くなる。大胆な投資をする、予算を付けていけば、必ず素晴らしい作品は出来ていく」と日本の映画界に向けて提言。その上で「お互いに切磋琢磨(せっさたくま)していきながら、ともにいい作品を作りたい。一緒にやっていければ、世界へ向けて、いい作品を作る環境が出来ると思う」と“共闘”を持ち掛けた。