12日に初日を迎える劇団唐ゼミ☆の第30回特別公演「『唐版 風の又三郎』延長戦」(17日まで)の公開稽古が11日、東京・浅草花やしき裏特設テント劇場で行われた。

1974年(昭49)に唐十郎(81)率いる状況劇場によって初演が行われたアングラ劇史上に残る名作。作者である唐からは「中野(敦之)が演出することによって、台本に隠されていた新しい魅力が分かった。浅草にスメル(匂い)を求めて攻めて欲しい。頑張って」とメッセージが寄せられた。

唐の弟子の演出家・中野敦之(40)は「(唐の)最高傑作とも言われる金字塔に挑みました」。唐の元妻で6月に亡くなった女優李麗仙さん(享年79)の追悼公演でもある。中野は「唐さんは乱暴狼藉(ろうぜき)者のイメージがあるけど、李さんと話している時は丹念に緻密に芝居を作った。芝居を作る求心力と暴れる遠心力の両方を受け継いでいきたい」と話した。そして「唐さんのメッセージで『中野によって、脚本の新しい魅力が』とありましたが、あれは自画自賛ですから」と笑った。

主演の女優禿恵(41)は「この作品は多くの人の人生に影響を与えた伝説の作品。唐さん、李さんへの憧れを伝えたい」。女優鳳恵弥(41)は「この2年間、コロナという最悪なことに見舞われたけど、最悪なことだけではなかった。舞台に立つことで、しっかりと痕跡を残していきたい」と話した。

俳優丸山正吾(38)は「『唐版 風の又三郎』というのは、全く他人の男女の思い込み、妄想からドンドン濃い関係になっていく。人間関係が希薄な今の世の中だからやる意味があると思う」。俳優米澤剛志(27)は「自分の演じる役は初演では唐さん、この間のシアターコクーンでは風間杜夫さんがやりました。すごく緊張するけど、自分の今の感覚を信じながら、今できることをやれたらいいと思う」と話した。