永瀬正敏(55)が5日、都内で開催中の東京国際映画祭が国際交流基金アジアセンターと共催する「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」の一環として、カンヌ映画祭で監督賞を受賞した経験を持つ、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督(61)とオンラインで対談を行った。

永瀬は20年早々、日本がコロナ禍に陥り、4月7日に最初の緊急事態宣言が発出され、自粛生活に入った中「コロナ禍で、どこにも出られなくなった。一部で、僕らの仕事が不要不急だと言われ始め、30何年たって不要って言われるのか…と思った時、DVD、配信など作品をたくさん見ていく中で、不要じゃないと思えた」と思ったと語った。その中で見た1本が、ジャクリン・ホセがカンヌ映画祭女優賞を受賞した、メンドーサ監督の16年「ローサは密告された」だったという。

永瀬は「全ての俳優を見ていて、自然体でカメラの前に立っているとビックリした。最後のローサの涙でバサッと切られる。いろいろなものをいただいた。僕らの使う言葉とは違うけれど、映画って、こう思わせてくれるものなんだなと」と「ローサは密告された」の感想を語った。その上で「まさに、コロナ禍で独りぼっち…猫がいるので二人ぼっちなんですけど。(俳優が劇中の)キャラクターと寄り添っているから、国が違っても僕が受け取ったんだと思う。そういう映画を、いっぱい。増やしていければいいと思うし、演じる側でいけば、いろいろなキャラクターに寄り添いながら、お客さんにどう見ていただくか」と語った。

メンドーサ監督は、コロナ禍について「映画業界は大きな影響を受けた。劇場も閉じ、俳優、監督も仕事がなくなったが、過去の経験になった。どんな悪い経験からも、立ち上がることが出来るということ。コロナは、過去の悪い状況の1つ…過去には、もっと悪いこともあった。フィリピンでは台風の影響もよく受けるが、困難から立ち上がることは出来る」と語った。

配信の視聴者と会場の観客からの質疑応答の中で、コロナ禍の映画界と、孤独を抱える人に向けて、どんな映画を作ることが出来るか? という質問が出た。永瀬は「精いっぱい、現場で良い作品を1本でも多く残すことじゃないかなと思います。映画館に、お客さんがいっぱい来ていただく状況を作るには、いい作品がないと難しいから。いろいろな方とスクラムを組んでやっていけたら…と俳優と話しています」と語った。

メンドーサ監督は「コロナ禍は、最初は何カ月かで収束するだろうと思ったら…これからコロナと生きていく。近しい人たち、家族が影響を受け、亡くなる人がいて現実なんだと知る。自分が被害者になるかも知れない…死生観にまで影響を与えられたわけです」とコロナ禍が続く現状への思いを語った。その上で「だけども、だからこそやるべきことをやる、1番、得意なことをやると、逆にエネルギーを与えられた。何が起きるか分かたない…幸せな時に幸せな人間として死にたい。私の意思をくじくのではなく、モチベーションが高まったわけです」と熱く語った。

メンドーサ監督は、コンペティションに「復讐」、ガラ・セレクションに尚玄(43)主演の「GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)」と、東京国際映画祭に2作を出品している。