歌舞伎の人間国宝、中村吉右衛門さんが先月28日に心不全のため77歳で亡くなったことを受け、吉右衛門さんの義理の息子、尾上菊之助（44）が2日、東京・歌舞伎座での出演を終え、取材に応じた。前日に通夜、この日に葬儀、告別式を親族葬で執り行ったことを報告した。
【家系図】中村吉右衛門さん家系図 兄は松本白鸚、おいは松本幸四郎、めいは松たか子、四女の夫は尾上菊之助＞
菊之助は「岳父はもっと舞台に立ちたかったでしょうし、もっともっと教えを請いたかった。それがかないませんでした」と話し、「尊敬する優しい父でした」と両手で顔を覆って泣いた。
3月28日に心臓発作で倒れ入院、闘病していた吉右衛門さんについて「8カ月間、ずっと頑張っていらっしゃった。ずっと何かを考えられているような、物思いにふけっているような表情をしていらっしゃった」と振り返った。最後に会ったのは、亡くなる前日27日だったという。
孫である菊之助の長男丑之助（8）を、ことのほかかわいがった。その丑之助の誕生日に吉右衛門さんは亡くなった。菊之助は「その日は誕生日を祝っておりました。ケーキの時に一報が入りました。その場では子供たちに伝えられず、2日後に『じーたんは和史（＝丑之助の本名）の誕生日に亡くなったんだよ。毎年感謝の気持ちでお祈りして伝えようね』と言いました」と話した。丑之助の様子について「心にぽっかり穴が開いたようで、私に抱きついてきました」。
休みの月に吉右衛門さんは、孫たちをディズニーランドに連れて行き、自分が大好きなプーさんのアトラクションを楽しんだという。菊之助は「普段はこわもてで威厳があって、なかなか近寄れない岳父でしたが、孫のことになると本当にかわいがってくれました」と懐かしんだ。
吉右衛門さんの存在について、菊之助は「本当に大きかった。どんなにつらくても全力で芝居をして出し惜しみしない。芸の模範でした。岳父のこと、中村吉右衛門のことを忘れないでください」と話し、「家族で頑張って歌舞伎の道を継いでいきたい」と語った。
戒名は秀藝院釋貫四大居士（しゅうげいいんしゃくかんしだいこじ）。棺には、家族で書いた手紙、夏祭りで丑之助をおんぶする吉右衛門さんの写真、丑之助が描いた吉右衛門さんの当たり役の1つ「熊谷陣屋」の絵などを入れたことを明かした。
