第94回アカデミー賞ノミネートが8日、発表され、濱口竜介監督(43)の映画「ドライブ・マイ・カー」が日本映画としては初の作品賞と脚色賞(濱口監督と大江崇允氏)、監督賞、国際長編映画賞(旧外国語映画賞)にノミネートされた。日本人監督の監督賞へのノミネートは66年「砂の女」の勅使河原宏監督、86年「乱」の黒澤明監督以来36年ぶり3人目となる。

邦画が国際長編映画賞にノミネートされるのは、19年の「万引き家族」(是枝裕和監督)以来3年ぶりで、受賞すれば09年の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)以来13年ぶり。アジアの映画が作品賞、監督賞、国際長編映画賞にトリプルでノミネートされるのは、20年に非英語作品として初の作品賞をはじめ監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4冠を獲得した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」以来2年ぶり。授賞式は3月27日(日本時間28日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われる。

「ドライブ・マイ・カー」は21年7月に世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で邦画初の脚本賞を受賞。その後も、世界各国の映画祭、映画賞を席巻。1月8日発表の全米批評家協会賞で作品賞、監督賞(「偶然と想像」と併せて)、脚本賞、西島秀俊(50)がアジア人初の主演男優賞と主要4冠を獲得すると、翌9日にもアカデミー賞の前哨戦として知られるゴールデングローブ賞で、市川崑監督の「鍵」(59年)が60年に旧名称の外国語映画賞を受賞して以来邦画では62年ぶりの非英語映画賞を受賞した。

全米批評家協会賞、ハリウッド外国人記者協会が主催するゴールデングローブ賞を制し、映画を専門に見る“目”から高評価を得ただけでなく、映画愛好家として知られるオバマ元大統領が昨年12月17日にツイッターで発表した、毎年恒例のお気に入り映画で紹介された14本の最上位に挙げられたことも世界中で話題を呼んだ。西島も米ニューヨーク・タイムズ紙選の今年を代表する13組の俳優にアジアから唯一、選ばれるなど、米国で広く知名度を上げ、支持されている。

「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹氏(72)が13年11月発売の「文芸春秋」12月号に発表した短編で、同誌14年3月号まで連続で掲載した「女のいない男たち」と題した連作の第1弾。14年の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に収められており、濱口監督は同作に加え「女のいない男たち」に収録された6編の短編の中から「シェエラザード」「木野」のエピソードも投影し、脚本を作り上げた。

物語は舞台俳優で演出家の家福(かふく)悠介(西島)が満ち足りた日々を送る中、脚本家の妻音(霧島れいか)が、ある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう。その2年後、喪失感を抱えたまま生きる家福は、演劇祭の演出で向かった広島で、寡黙な専属ドライバー渡利みさき(三浦透子)と出会い、1度は拒否するも受け入れ、ともに過ごす中で、それまで目を背けていた、あることに気づかされていく心情を描く。