声優緒方恵美が12日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた主演のアニメ映画「劇場版 呪術廻戦0」(朴性厚監督)大ヒット御礼舞台あいさつで「コロナ禍の中で、アニメーションのあり方が大分、変わった」と現状を憂えた。

新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点から、スタジオ内で声優が合同でアフレコを行うことも難しい状況だが、今作では重要なシーンにおいては数名でアフレコを行ったという。「一緒に出来ていなかったら、最後のシーンも全然、違ったと思う。またみんなで掛け合ったりするシーンが少しでも多いようなアフレコや、日常が戻れば良いなと思います」と訴えた。

緒方は劇中で主人公乙骨憂太を演じ、呪術高専の教師で最強の呪術師・五条悟を演じた中村悠一と最悪の呪詛師・夏油傑を演じた櫻井孝と重要なシーンで一緒にアフレコしたという。まず、中村が「収録は、緒方さんと櫻井さんと3人でできて言葉での刺激をもらっていた。圧倒されるばかりで、冷静な面と冷静じゃない面があった。緒方さんの呼吸の演技が、メチャメチャ良くて、呼吸の音でこっちもグッと持って行かれた」とアフレコを振り返った。その上で「年明け以降、映画を見に行ったんですけど、2人との芝居で気づけなかったことを、スクリーンで見たことによって改めて気づくことがあったり」と、アフレコ時に感じきれなかったものを映画を見て感じたと語った。

すると、緒方は「アクリル板の、もっと厚いのが両脇にバンとある。隣でしゃべっていても全部が聞こえない」と、舞台あいさつの壇上に置かれたアクリル板より、厚い仕切りを置いた上で中村と櫻井とアフレコを行ったと説明。その上で「(コロナ禍の)前だと(仕切りが)ないので、もう少し息遣いが聞こえた。気配は一緒に取っていることの方が圧倒的に多くて、伝わってきてはいますけど、今は細かい息遣いが聞こえない状態で取っているので、そういう意味ではスクリーンになって我々全員、多分、見て初めて気付くことがある」とコロナ禍以降、仕切りを置くことが声優同士の演技に影響を与えていると語った。

中村は、緒方の発言を受けて「(演じた)五条は、自分のセリフをしゃべり続けているわけじゃなく、説明が多い。1人で取った場合(演技は)説明で終わる可能性がある。一緒にやると(共演者が)受けてくれる息遣いが発生し、そうすると、こういうふうに説明していこうか、と気持ちも変わってきたりする」と、他の声優と一緒にアフレコすることで演技は変わると強調。その上で「緒方さんの声を聞きながらやれたのは大きい。完全に1人だったら、声の回り、完成形は違ったと思う」と言い切った。

櫻井も「(アフレコが)個別になると、どうしても算数みたいな感じで(計算して)演技しなきゃいけないことがある」と、共演者がいない状態での声の芝居は難しいと口にした。その上で「全部ではなかったですけど(緒方や中村と一緒にアフレコ出来た)今回は余計なことを考えずに、没頭できた。自分以外の人がいた空気感があったから出た表現、セリフはたくさんあったと思う」と緒方と中村と一緒に重要なシーンをアフレコ出来たことで、生まれた表現があると声を大にした。

緒方は「一緒に芝居をするのが、本当は当たり前なんですけど、一緒にやると違うなと改めて思った。重要なシーンだけですけど…一緒にやれて本当に良かった」と、かみしめるように口にした。その上で「コロナ禍の中で、アニメーションのあり方が大分変わった。お芝居の掛け合い、あり方が大分、変わってきてしまって。若手の声優の中には、まだ1度も掛け合っていない人がいると思いますし」と、若手の中には合同でアフレコしたことがいない声優もいることを示唆した。

その上で「(重要なシーンだけでも声優が複数名でアフレコした)その結果が、こういう映像になるということを、業界のいろいろな方々にもう1度、確認していただきたい。スタッフの皆さん、頑張ってくださっていますけど、何とか、みんなで掛け合ったりするシーンが少しでも多いアフレコや、日常が戻れば」と切に願った。