昨年11月に99歳で死去した作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの素顔を撮ったドキュメンタリー映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」(中村裕監督、27日公開)の先行上映会が19日、京都市内で行われ、中村監督と寂聴さんの秘書を務めた瀬尾まなほさんが舞台あいさつに登壇した。

監督の中村氏は映像ディレクターとして17年間にわたって瀬戸内さんの日常に密着し、NHKスペシャル「いのち 瀬戸内寂聴 密着500日」などのドキュメンタリー番組を手掛けてきた。中村監督は「気がついたら17年たっていた。僕自身はまだ先生が亡くなったという実感はなく、そばにずっといてくれる感じがしています」としみじみと語った。

瀬尾さんは「亡くなって半年。私もスタッフも心の整理がついていない」と打ち明けた。それでも「映画として生前の姿を見ることができるのは、私にとってもみなさんにとっても、とてもうれしいこと。映画を通して生き様をご覧いただければと思います」とあいさつした。

瀬尾さんは「やさしくて、思いやりがあって、本当に志が高かった」と話し、「最後まで5つの連載を抱えていました。ペンを持ったまま、机に伏して死にたいと理想の死に方だと語ってました」と明かし、「最後はそうはならなかったが最後の最後まで書いていた。書くことの情熱は99年間、ずっと持ち続け、変わらなかったと思う。老体にムチ打ちながらでも書く喜び、書き続けることの情熱があった。最後まで作家でした」と語った。