今年1月に脳梗塞を発症し5月に退院、現在もリハビリ治療を続けている落語家三遊亭円楽(72)が11日、東京・国立演芸場の8月中席公演で、203日ぶりに高座復帰した。観客の大きな拍手に迎えられ、生涯現役を宣言した。

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トップバッターで登場した。緞帳(どんちょう)が上がると大きな拍手が起こり、円楽は手ぬぐいで涙をぬぐい「ありがとうございます。とにかくここまで上がってきました。感極まって怪しくなるかもしれません」とあいさつした。1月20日の落語会以来、203日ぶりの高座。舞台上で準備を整えた板付きでの幕開きだったこともあり「歩いて出てきて、歩いて帰れるようになるまで頑張ります」と、早くも次の目標を語った。さらに「みっともなくてもいい。死ぬまでやります」と宣言した。

これまでも肺がん、脳腫瘍と、大病を乗り越えてきたこともあり「ICUから3度目の帰還です」とアピールした。入院中に見たという夢の話で、師匠で5代目圓楽さん、親交の深い桂歌丸さんへの思いを語った。3人でお花畑を歩いていたところ道が2つに分かれ、先代圓楽さんは右へ、歌丸さんは左へ行ったという。「しょうがねえから、来た道を戻ったらICUだった」。国立演芸場8月中席は、歌丸さんが長くトリを務め、19年から円楽がトリを引き継いだ。「8月になると毎年呼ばれる」と言いつつ、2人に見守られていることを感じながらの復帰となった。

短くて楽しめるとして、復帰1席目に決めていたという「猫の皿」をかけた。終わってみれば、15分の予定が30分近くに。再びの大きな拍手に、涙を見せた。

終演後、円楽は「『落語は急にはうまくならない。すぐに下手になる』と教えられたけど、なるほどね」と、辛口ながらホッとした表情だった。体調を聞かれると「まあまあ」。高次脳機能障害で短期記憶に支障はあるとしたが「昔覚えた落語は忘れてない」と自信も見せた。発作で倒れた際に左肩をぶつけ脱臼し、まひも残るが、近所を散歩しながらリハビリを続けているという。

空いている大名跡の円生襲名や、東京の落語界の統一など、思い描くプランはたくさんある。「笑点」についても「75歳定年制。新陳代謝が必要。俺もしがみついている」と切り込むなど、円楽らしさは健在だった。

14日、20日千秋楽に加え、15日の出演も決まった。【小林千穂】