ピーターこと池畑慎之介のライブ「SINNOSUKE OZIBA LIVE 2 コットンクラブ」が11月中旬に、東京・丸の内コットンクラブで行われた。古希(70歳)とは思えぬ妖艶さと変わらぬ歌声で、観客を魅了した。

ライブの後、インタビューした。その中で大ヒット曲「夜と朝のあいだに」に、作詞家のなかにし礼氏が込めた秘話を教えてくれた。時代を先取りした、実に興味深い秘話である。

池畑は大阪府生まれ。上方舞の吉村流第四世家元で、人間国宝の故吉村雄輝氏の長男である。女舞で3歳で初舞台を踏み、跡継ぎとして将来を嘱望されていた。しかし16歳で家出。東京・六本木のゴーゴークラブで働いていた時にスカウトされた。

69年に映画「薔薇の葬列」(松本俊夫監督)でデビューした。17歳でゲイバーで働く美少年エディを演じた。その妖艶さは衝撃的で、日本中にセンセーションを巻き起こした。

同年の歌手デビュー曲「夜と朝のあいだに」も大ヒットした。17歳の、美少女のような顔立ちからは想像できない低音で歌い、第11回日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞した。芸名のピーターはバイト先で「あの子、男の子? 女の子? ピーターパンみたい」と言われていたことに由来する。

ジェンダーレス(社会的・文化的な性差をなくす考え方)の先駆者のような存在だった。当時、まだそうした概念は一般的ではなかったが、作詞家のなかにし礼氏は意識していたのだろう。「夜と朝のあいだに」というタイトルに、深い意味を潜ませた。

池畑 フランス語の夜(la nuit)は女性名詞で、朝(le matin)は男性名詞なんです。なかにしさんは学生時代からシャンソンを訳詞していて、フランス語が堪能でした。後日「この歌は女と男のあいだなんだぞ」って。なんで当時教えてくれなかったのと言うと「若いころに教えても、意味分からないだろう」って言われました(笑い)。

「夜と朝のあいだに」のタイトルを「女と男のあいだに」として、この曲を聴くと、難解に思われた歌詞がスッと入って来る。さすがなかにし礼氏である。

タイトルに意味を込める手法は他にもある。有名なのは山口百恵(現・三浦百恵さん)が歌った「いい日旅立ち」(78年)だ。当時の日本国有鉄道(国鉄、現JR)のキャンペーンソングで、タイトルに車両を製作する「日立」と旅行代理店の「日本旅行」(略称・日旅)という関連会社の名前が入っている。

PUFFYの第2弾「これが私の生きる道」(96年)は、化粧品会社の資生堂のCMソングに起用され大ヒットした。そのタイアップに感謝したタイトルで、漢字を抜き出すと「私生道」。「資生堂」を忍ばせているのだ。

AKB48の28枚目のシングル「UZA(ウザ)」(12年)は「ウザい(UZAI)」の省略形である。「うざったい」「うっとうしい」といった意味だが、実は意味深なタイトルでもある。アルファベットで「U」は21番目、「Z」は26番目、Aは1番目で、全部足すと48。つまり「UZA」は「AKB48」を指すとも解釈されている。

矢野顕子の「春先小紅(はるさきこべに)」(81年2月発売)も面白い。歌詞に「ほら 春先小紅 ミニミニ 見に来てね」とある。曲の発売直後の81年3月20日から、兵庫・神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)が開幕した。この歌詞が「ほら 春先 神戸に見に見に、見に来てね」と聞こえると話題となった。タイトルは「春先神戸に」とも読める。関係者は「まったく関係ない」と否定したが、時期もタイミングもピッタリで、「神戸に行こうかな」と思った人もいたかもしれない。

ヒット曲のタイトルに隠された意味を探ってみるのも一興である。【笹森文彦】