劇団「青年団」主宰の平田オリザ氏は16日、セクシュアルハラスメントで告発された劇作家の谷賢一氏(40)に対して同劇団退団の措置をとったことを、劇団の公式サイトで明らかにした。

公式サイトでは、オリザ氏の名義で「谷賢一氏のハラスメント案件について」と題した文面を掲載。「このたび、劇団青年団演出部に所属する谷賢一氏がハラスメント案件で東京地方裁判所に告訴されました。詳細は今後、司法の場で明らかになっていくかと思いますが、他の関係者の証言もあることから大筋の告発は事実であったと思われます」と報告した。「念のため、告発文と谷氏の反論も併記します」と記し、谷氏の主宰劇団「DULL-COLORED POP」の劇団員の女性のアップした告発文と谷氏の反論文のリンクも掲載した。

続けて「劇団の内規に照らして、谷氏は青年団演出部を退団することとなりました。法律上は推定無罪の原則もありますが、被害に遭われた方の心情をより重く考え、また告発文にはなく訴状には記されている情報も得ていることから、今回の措置を執るに至りました」と説明。「青年団はこれまでもハラスメントについては厳しい対応を続け、実際に、そのために(特に外部には告知せずに)退団となった者もいますが、今回は公共性の高い事柄のため、ここに、これを公表いたします」と公開の経緯もつづった。

オリザ氏は「青年団演出部は同人的な集合体であり、多くの場合、それぞれの演出家は、個別の独立した組織(劇団)を持っています。特に今回ハラスメントが起きたDULL-COLORED POPには、谷氏以外、青年団員は所属しておりません。そのため、当該劇団の内部で何が起こっていたかについては把握することが出来ませんでした。また青年団内のことではないので、今後もそこに直接介入することも出来ません」と状況を報告。「しかしながら、演出部を率いる劇団主宰者としての私の責任は重く感じています。特に谷氏は福島県の復興にかかわる仕事もしていることから、これまでもハラスメントについてはくれぐれも注意するように、折に触れて申し渡してきました。結果として、それが効力を発揮していなかったことは忸怩だる思いです」と無念の心境を明かした。

今後について「現在、青年団は、これまでのハラスメントに関する内規をさらに精査して、新しいガイドラインと、それに対応するための劇団内組織を準備しているところでした。本件を受け、その準備を加速し、劇団内外でのハラスメントの予防、抑止にいっそう努めていきたいと考えています」と告知し、「新ガイドラインなどは、完成後に、劇団ホームページに掲載の予定です(現在の内規は、2000年代初頭に制定された古いものに何度かの加筆があり、公表できる体裁になっておりません。しばらくお待ちください)」とした。

オリザ氏は「谷氏は法廷で争うとのことですが、今後、青年団としては、被害に遭った方たちのお役に立てることがあれば支援をしていきたいと考えています。取り急ぎ、ご報告いたします」と文面を締めくくっている。

谷氏をめぐっては、主宰劇団「DULL-COLORED POP」の劇団員の女性が、セクハラで谷氏を告発したとする文書を公開。告発を受け、谷氏の新作舞台「家を壊す-他、短編-」は、福島県南相馬市で16~19日まで予定されていた全5公演が中止された。主催者は「状況を勘案して協議を行った」としている。谷氏はサイトで、「事実無根および悪意のある誇張に満ちており、受け入れられるものではありません。司法の場で争う所存です」などと反論している。