第76回カンヌ映画祭で男優賞を獲得した役所広司(67)が30日、6月1日からNetflixで世界独占配信される「THE DAYS」(西浦正記監督、中田秀夫監督)ワールドプレミア舞台あいさつに出席し、日本に“凱旋(がいせん)”した。

受賞後、初の公の場に登場した役所は、黒のスーツ姿で登壇。拍手喝采の中、「ありがとうございます。昨日帰ってきました。皆さんの応援がカンヌまで届いていました」とあいさつした。続けて「『THE DAYS』も『PERFECT DAYS』もちょっと名前が似ていますけど、ぜひこの作品はみんなで本当に力を合わせて、志を持ってつくりました。世界で唯一、映画館のスクリーンで見られるお客さまではないでしょうか。またあと8話までありますので、ぜひ見てください。よろしくお願いします」と語った。

小日向文世(69)からは役所の受賞を受け「またこれも興味を持って見ていただける」とコメントされた。遠藤憲一(61)からは「おめでとうございます。ノリノリじゃないですか役所さん。パワーは尊敬しています」と言われた。

役所は事故当時の福島第一原発所長を演じる。「この話をもらったときは、実際のドラマにしていいのかとちゅうちょしたんですけども、増本プロデューサーと会って、それでとにかくあの日、あそこの中で何が起きていたのかを伝えるべきだ、という話をして。そういうものをライフワークとしてやり続けたいという思いを聞いて、決断しました」。

さらに「僕もだんだんあの事故の時の恐怖心がだんだん薄れていくんですけど、やっぱりここで世の中のエネルギーについて1人1人が考えていかないといけない。国民1人1人がそれを判断して、投票もしなきゃいけなくなると思います。この配信ドラマをきっかけに、あそこに立ち返って考えていただきたいと思います」と続けた。

最後に役所は「さきほど、小林薫さんが防護マスクで、六平(直政)さんと2人でこんなに苦しい思いしているのに、冷房の効いた部屋で仕事している俳優と同じギャラじゃ割に合わんとおっしゃっていたそうですけど、みんな頑張りました」と笑いを誘って締めくくった。

イベントには竹野内豊(52)小林薫(71)石田ゆり子(53)増本淳プロデューサー(46)、西浦正記監督(54)中田秀夫監督(61)が参加した。

Netflixが世界で独占配信する「THE DAYS」は、3月11日の事故発生から、あの日、あの場所で何が起こっていたのかを克明に描く全8話のドラマ・シリーズ。ジャーナリスト門田隆将氏が福島第一原発事故の関係者を取材した渾身(こんしん)のノンフィクション「死の淵を見た男一吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)などに基づき、製作陣は徹底的にリアリティーを追求。安易な英雄譚(たん)や美談に仕立てることを避け、日本政府、電力会社、現場で事故に対峙(たいじ)した人々の3つの視点による重層的なドラマによって驚くべき真実をあぶり出していく。

役所は「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督、日本公開未定)に主演し、27日(日本時間28日)にフランスで行われたカンヌ映画祭で、日本人俳優として04年の柳楽優弥(33)以来19年ぶり2人目の男優賞を受賞した。

◆役所広司(やくしょ・こうじ、本名・橋本広司=はしもと・こうじ)1956年(昭31)1月1日、長崎県諫早市生まれ。県立大村工高卒業後、上京し千代田区役所土木部道路課に勤務。20歳で見た舞台「どん底」に感銘を受け、主演の仲代の無名塾入り。78年「オイディプス王」の群衆の1人で初舞台。80年のNHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」で、ドラマ初出演。96年の映画「Shall we ダンス?」で主要映画賞を総なめ。近年は20年「すばらしき世界」や公開中の「銀河鉄道の父」など主演、出演多数。179センチ。血液型AB。