第71回サンセバスチャン映画祭(スペイン)授賞式が9月30日(日本時間10月1日)に開かれ、コンペティション部門に出品された近浦啓監督(46)の映画「大いなる不在」に出演した藤竜也(82)が、最優秀主演賞を受賞した。
藤は登壇し「昨日、私たちの近浦監督による映画を上映いたしまして、上映が終わって劇場の明かりがついた瞬間、思いもよらない風景を目にしました。心に染みる、とても長いスタンディングオベーションでした。そして私が退出する際に歩いて行くと、また両側に観客が温かい拍手と、たくさんの優しいまなざし、美しい笑顔を下さいました」とスピーチする中で、目を潤ませた。そして「映画よ、ありがとう」と口にした。
そして「私は、このありがとう…スペイン語ではグラシアス? この言葉は、美しいと思います。もう…そんなに遠くない将来、日本を代表する監督になる近浦監督、ありがとう」と製作スタッフらに感謝。「この映画の主催者、関係者の方と、すばらしい観客の皆さんに…ありがとう」と会場全体にも感謝した。
藤は、授賞式後の記者会見で、受賞スピーチの中で「映画よ、ありがとう」と口にした真意を聞かれた。「私の好きな言葉は、ありがとうと、ごめんなさいです。これが、離婚しないで一生、妻と過ごせている理由ですね」と語り、笑みを浮かべた。1968年(昭43)8月の結婚から55年「一筋」と語る元スター俳優の妻・芦川いづみさん(87)への揺るぎない愛を、スペイン・サンセバスチャンの地でも口にした。そして「ありがとうと、ごめんだけ言っていれば、決して人と争い事にはならないと思います」と言い、笑みを浮かべた。
サンセバスチャン映画祭は、世界3大映画祭のカンヌ(フランス)ベネチア(イタリア)ベルリン(ドイツ)に次ぐ、権威のある国際映画祭として評価が高い。「大いなる不在」は、藤が演じる認知症を患った元大学教授と、長年疎遠になっていた俳優の息子の姿を描く。息子は森山未来が演じた。他に真木よう子や原日出子らが出演。