眞栄田郷敦(23)の初主演映画「彼方の閃光」が、12月8日から東京・TOHOシネマズ日比谷を皮切りに、全国で順次公開されることが2日、決まった。眞栄田は日刊スポーツなどの取材に応じ、21年の撮影から2年を経ての公開に「焦りはなかった。1番、良い形で公開できればと思っていた。ワクワクしています」と喜んだ。また父の千葉真一さんが亡くなって3カ月後の同11月の撮影で共演した池内博之(46)が「父親に見える瞬間もあった。涙が止まらなくなった」と、自身にとって特別な感情を抱き、演じた作品だと吐露した。
「彼方の閃光」は、フランスを拠点に著名な映画監督の作品の映画音楽を多数、手がけてきた世界的音楽家・半野喜弘監督(55)が原案と脚本、音楽、スタイリングまで手がけたオリジナル作品。Nippon Cinema Now(ニッポンシネマナウ)部門に出品された22年10月の東京国際映画祭のレッドカーペット上で、眞栄田自ら「実は配給会社すら、まだ決まっていない状況ではあるんですけども、今日をスタートに世界中、たくさんの人々に見てもらいたい作品。何かが動き始めたらいいなと思います」と公開が決まっていないと明かし、話題となった。
眞栄田は劇中で、米軍基地や長崎、沖縄などのテーマに取り組んだ戦後日本を代表する写真家・東松照明の写真にひかれ、強く導かれるように長崎へ向かった光を演じた。光は幼い頃に視力を失い、手術に成功したものの色彩を感じることができないという難役で、本編もモノクロで描かれるが、スクリーンを焦がすような眞栄田の強い目力は、カラー以上の迫力、説得力を持ってスクリーンの中から突き抜けてくるようだ。「脚本を読んだ時に響いたし、魅了され、光という役に挑戦したい気持ちが強かった。たまたま、それが主演だったというだけで。作品が僕もすごく好きだし、いろいろな人に見て欲しい。初主演が、これで良かったと思います。その時、出せる全てを出させてもらった。すてきな方と、こだわりを持って作ることが出来た」と胸を張った。
光は、池内演じる自称革命家の男・友部にドキュメンタリー映画製作に誘われ、長崎、沖縄の戦争の痕跡を訪ね、記憶をたどる。そうして紡がれていく物語も、太平洋戦争に突き進んだ日本の過去を改めてたどり、現代の日本人に問いかける、挑戦的なものとなった。それでも「監督は絶対、断られるだろうと思っていたらしいんですけど。もちろん、難しいなと思いましたし、その分、準備もしました。楽しみになるまで、そういう作品を準備するのが好きなんです」と、逃げる気は、かけらもなかった。
そうした覚悟の上で、その時の自らの全てを注ぎ込めた裏には、芝居でぶつかり合う中で父・千葉真一さんの存在、においが感じられた、池内への格別な思いがあった。作品は、主人公の光が10歳の09年を描く1部、20歳の19年を描く2部、71歳の70年を描く3部で構成され、撮影は21年8月に3部、眞栄田が出演した2部は同11月に東京、長崎、沖縄で行われた。関係者によると、千葉さんは3部の撮影が始まる数日前に82歳で亡くなったという。眞栄田も「撮影の少し前に、ちょっとしたターニングポイントがあった」と、詳細こそ口にしなかったが、当時の心情をにじませた。
そうした中、共演した池内が「自然に引っ張られていた感じがしました。監督にも言っていたんですけど、父親に見える瞬間とかもあって」と、父と重なって見えたと振り返った。「ヒゲとか容姿、体形とかも含めて(池内が)すごい近い存在に感じる瞬間が、すごくあってスッと入ってきた感じがしますね。においとか手の感じとか、何かすごく重なるものがあって、それがすごい大きかったですね」と、かみしめるように語った。「プールサイドのシーンも、抱き締められて涙が止まらなくなったり、言い合いのシーンも震えが止まらない時もありましたし。今から見れば、細かい反省点はありますけど…でも、あれは素の感情でやったので」と池内に感謝した。
また、3部で71歳になった光を演じる加藤雅也(60)も生前、千葉さんと縁があった。「本当に、ご縁だなと思ったし。単純に、すごい顔が似てるなぁと思いました(笑い)あの3部が、良いですよね。見終わった後の余韻が、気持ちいいですよね」と笑みを浮かべた。
眞栄田自身、1月に結婚を発表し、8月には第1子の誕生が明らかになった。劇中では、子どもを抱き寄せたり、触れ合うシーンも出てくるが「まだ初々しいというか、慣れない感じがありましたね」と、当時の自身を冷静に分析した。「今やったら、より深みのあるものが出来るかもしれないですけど、あの時の自分が光らしさにもなっていたのかな? 今、やったら、ちょっと印象が違う光になっていたから…すごいタイミングの良い時期だったのかな」と照れ笑いを浮かべた。
守るべき存在もでき、人間としても次のフェーズに入った実感はある。「人として、年輪じゃないですけど、深みを増していけたらいい。常に思っていますけど、新しいステップだったり、自分でも見たことのない自分を、常に作品をやるごとに広げていきたいなという思いはありますね」と語った。
初主演作を送り出した、その先を見つめる視線にブレはない。「僕はここに行きたいとか、決めないようにしていて。本当に自分が動かされる、本当にやりたいと思う話、役を1つ1つ、丁寧に、その時できる100%でやり続けていくのが今の目標。それが、自分の中で決めていることですね」。そして、こう続けた。「怖いという感覚が、ないのかもしれないです。楽しみ…ワクワクします」。
「彼方の閃光」は、眞栄田にとって主演を張るならば、どんなに困難な役、作品でもて挑戦する“逃げない主演俳優”という名刺代わりの作品に、確実になる。【村上幸将】



