俳優山崎育三郎(37)が、米トニー賞を席巻したブロードウェーミュージカル「トッツィー」(10日から、東京・日生劇場)で24年の幕を開ける。ミュージカル界のプリンスが、初の一人二役で女装にも挑む話題作。人間味あふれるコメディー、名曲ぞろいのナンバーに「ミュージカルの楽しさがすべて詰まった作品」と意気込んでいる。【梅田恵子】
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売れない中年俳優が女装してオーディションを受けたところ、一躍大スターになってしまう顚末(てんまつ)を描いたミュージカル・コメディー。名優ダスティン・ホフマン主演で大ヒットした82年の映画が原作で、山崎はホフマンが演じたマイケルとドロシーの2役を演じる。女性と思われたままスターとなるうちに、恋をし、葛藤し、成長していく物語だ。
「主演として2役を演じるのは初めてで、自分にとって大きなチャレンジ。仕事がほしくて、役者が本気で女性を演じているというところにも面白さを感じます。ドロシーとマイケルでは歌う音域も違い、キャラクターの振り幅を歌で表現できるのはミュージカルならでは。自分にとって新しい扉が開く作品になるとわくわくしています」
昨年行われた制作会見では、マイケルの姿で登場して劇中ナンバーを歌い、40秒の間奏の間に真っ赤なドレスのドロシーに大変身する早替えを披露。美しいビジュアルが話題を集めた。
「40を迎えた俳優が女装しているお話なので、ちゃんと熟年の女性に見えたらいいなと。育三郎のおしりは小さくてプリッとかわいいので(笑い)、お尻には大きなパックを入れています」。イメージしている美は、岡山の祖母という。「子どものころに見ていた姿がドロシーっぽい。パーマあてて赤い口紅して、アクセサリーじゃらじゃらつけてヒールはいて。いま95歳なんですけど、その時代から会社を経営していたキャリアウーマン。大好きなおばあちゃんです」。
ミュージカル界のプリンスとしてさまざまな役を演じてきたが、「今回が一番大変」と話す。
「単純に、舞台にずっと出ているんですよ(笑い)。裏にいる時は常に早替えで」。制作発表会で披露した40秒の早替えシーンは初めて奇跡的に成功したものとし、常に成功するよう準備を重ねてきた。「ここをちゃんときめないと、メリハリ的にずっこけちゃう。笑いは緻密に稽古したものから初めて生まれるので」。日米で異なる笑いのツボにも直面したが、「カンパニーでディスカッションし、笑いを作る作業をみんなでやってきた」と自信をみせる。
演じるマイケルに、自分を重ねてもいる。自身も12歳でミュージカルに出会い、「自分ではない誰か」を演じることで自分を開放する自由を知った。ドロシーという別人格を演じることで気づきを得ていくマイケルの姿には「全部共感できる」と話す。「自分が選んだやり方でポジションをつかみ、認められていく。その中での葛藤と成長は、作品の大きな見どころになっています」。
日本初上陸の本作を通し、「新しいスタートラインに立った気持ち」と語る。「名曲ぞろいのナンバー、ショーアップされた振り付け、笑って泣けるストーリー。ミュージカルの楽しさが全部詰まっている。この作品で2024年、お客さまと最高のスタートを切りたいです」。
■29歳「あの1歩は間違っていなかった」
<原点を語る>
ミュージカル界のプリンスの原点は、いつも母親の後ろに隠れているような人見知りな子。母親のすすめで小学3年から歌を習い、12歳で小椋佳さん企画のミュージカル「フラワー」(98年)に出演。人生が激変した。「役を通して“自分じゃない誰か”になると、すごく開放的で自由になれて、たくさん息が吸える感覚があった。歌で役を演じられるのはミュージカルだけ。ここが居場所だと思った」。
「自分が好きなこの場所をもっと知ってほしい」。29歳の時、ミュージカルをメジャーに押し上げたい一心でテレビの世界に飛び込んだ。歌番組やバラエティー番組にせっせと出演し、自ら「ミュージカル界のプリンス」と名乗って旗を振り続けてきた。
現在のミュージカル人気を素直に喜ぶ。「最初はひとりぼっちで不安でしたが、あの1歩は間違っていなかったと。そもそも自分が恐怖や負担を感じるものにしか大きな変化はない。『やめた方がいい』とか否定的な声を聞くと、その先に見たことがない景色がありそうで燃える(笑い)」。
ミュージカル界のプリンスの称号について聞くと、「正直どうでもいい」と大笑いした。「お茶の間に届けば何でもいいんです。マイケルが、仕事がほしいという切実な思いで女装してオーディションに行ったのと同じ」と明快だ。
今やドラマ、ラジオ、トーク番組MCなどマルチな才能で引っ張りだこ。どれも大事な場所として打ち込む中、あらためて舞台の特別感を感じているという。「メディアの変化でいろんなエンタメが生まれている時代に、1回きりの空間をお客さまとだけ体感する舞台は、過去も未来も変わらない。価値ある場所で、これからもちゃんと表現できる存在でいたいです」。
◆ブロードウェーミュージカル「トッツィー」 俳優マイケル・ドーシー(山崎育三郎)は、こだわりが強すぎて周囲と衝突を繰り返し、仕事がない日々。ある日、女装してドロシー・マイケルズとしてオーディションを受けたところ、合格してしまう。一躍スターとなる中、事情を隠したまま、女優ジュリー(愛希れいか)に恋をする。19年、米トニー賞ミュージカル部門最優秀脚本賞など11部門ノミネートの話題作が日本初上陸。1月10日に東京・日生劇場で開幕し、大阪、名古屋、福岡、岡山でも公演。
◆山崎育三郎(やまざき・いくさぶろう)1986年(昭61)1月18日、東京都生まれ。ミュージカル俳優として「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「エリザベート」「モーツァルト!」など出演多数。NHK連続テレビ小説「エール」、大河ドラマ「青天を衝け」などドラマにも多く出演するほか、日本テレビ系「おしゃれクリップ」のMCなどマルチに活躍中。177センチ。血液型A。



