女性3人組バンド、SARD UNDERGROUNDが3月20日に発売したアルバム「ZARD tribute Best Selection」が話題を呼んでいる。07年に亡くなった坂井泉水さんボーカルのZARDのトリビュートバンドとして19年にデビューして5年。9月には初の全国ツアーも控えている。節目の年を迎えた3人にアルバムや初ツアーへの思いを聞き、5年間を振り返ってもらった。【松本久】
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-デビュー5周年を振り返ってください。最も楽しかったことと、最もつらかったことを教えてください
神野友亜 ここまで本当に早かったと今は思うけど、最初の頃は毎日不安で、長いなって感じていました。今は3人とも仲が良くて、待ち時間とかも楽しいので早く過ぎていってる感じなんですけど…。一番楽しかったことはやっぱりライブです。ZARDさんの曲とオリジナル楽曲のどっちも届けられるライブって私たちにしかできないのかなと思っています。
そしてつらかったことは、ZARDさんのトリビュートバンドとして始まって、当時は批判の声も結構多くて…。SNSのコメント欄で「下手だからやめろ」「こんなの意味がない」とかいろいろ言われたりもした。その時は結構、ひと言ひと言を受け止めちゃってつらかったなって。ただ、直接イベントとかでお会いした時に、ファンの方に温かいメッセージをたくさんいただけて「こういう人もいるから頑張れるな」と思っていました。
杉岡泉美 「死ねっ」と言われたこともありました。
神野 そういう時はぐさっときていましたね。
杉岡 私も5年間はあっという間で早かったです。一番楽しいのは、ライブでオリジナル楽曲の「振り」をお客さんがやってくださっている姿を見ること。すごくうれしいです。あとZARDさんの楽曲も私たちは大好きだし、ファンの方々でも好きな方たちが来てくださっているので、その曲を1つの空間でみんなで味わえているのがすごく幸せだなと思います。
-ファンをZARD世代とSARD世代で分けると、年配というかZARD世代の方が多いのですか
(3人とも) 多いです。
坂本ひろ美 そこを逆にしていけたらいいですね。 杉岡 最近はお子さんを連れてきてくださる方がいらっしゃって。「子供がファンです」とか「家で歌っている」と言われるとうれしいです。活動する意味を感じるなというか。
坂本 私もこの5年はすごくあっという間だなって思うんです。うれしかったことはライブ。演奏してる時にみんなと「1つになってる」っていうのが大好き。そこはお客さんも一緒になってて、音楽で満たされた空間っていうのがすごく大好きです。つらかったのは、デビューしてすぐコロナ禍になってしまって、お客さんと会えない時間があったことですね。久々に会えて、直接温かい声をもらえた時は、本当にありがたいなって心に染みました。
-21年からオリジナル楽曲もリリースしています。手応えはどうですか
神野 やっぱりうれしいですね。自分が書いた言葉をみなさんに届けられるって本当にすごいことだなと思ってて。長く届けられていけたらいいな。
杉岡 オリジナル曲は友亜ちゃんが歌詞を頑張ってくれてるんですけど、まだメロディーとか、自分たちで出した曲がない。頭では思い浮かんでいるんですけど、それを形にするのが本当に難しい。(オリジナル曲の)作曲家さんたちがすごい方ばかりなので、それにはまだまだかなわない。でも、これから本当に頑張っていつかファンのみなさんにお届けしたいです。
坂本 オリジナル楽曲は友亜ちゃんの歌詞の世界観があって、また違う雰囲気で届けられるので、ライブとかで振り付けを一緒にしたりとか、ファンの方が声を出してくださったりとか、すごくうれしいなって思います
-3月22日に発売したZARDのカバーアルバム。どんな内容でどんな思いで作りましたか
神野 ZARDさんの曲が14曲入っているのですが、その中の8曲がファーストアルバムで歌ったことがある楽曲でリレコーディングしました。私はずっとレコーディングし直したいって話してて。最初のアルバムは、全曲と言っていいほどテンポもキーも原曲と変わっていて、アレンジもちょっとポップな感じになってるので、原曲に近づいたサウンドでライブとかでも演奏したいなっていう憧れがあった。今回やっとできたっていう感じです。
-なぜ原曲に近づけたかったのですか
神野 活動していく中で「ZARD愛」が日に日に増していって…。SARD UNDERGROUNDらしさを出していくのもいいけど、ZARDサウンドが恋しくなってきたんです。ライブではやっぱりあの音(原曲)でやりたいなっていう思いです。
杉岡 このアルバムは大好きな曲がたくさん入っています。特に「Don't you see!」のメロディーがすごく好きなんですよ。イントロの部分がすごく好きで。それを今回も演奏できてしびれました。
坂本 全曲が名曲ばっかり。ずっと何回でも聴けるなと思っていて。ファーストアルバムの時はシンセサウンドが結構多かったんですけど、今回はピアノのサウンドが多くて、それもうれしいなって思ったり。ライブで演奏する時にすごく楽しみだなって思っています。
-ZARDサウンドの継承者としてのポジションがありながら、SARDとしてもオリジナリティーをもっと出したい。そんな思いが強いのかなって思っていたけど実際はどうでしょうか?
神野 ZARDさんの曲はずっと届けていきたいですね。オリジナルももちろんそうです。
杉岡 私もやっぱりZARDさんの楽曲を大切に演奏していって、それプラス私たちらしさが出るオリジナル楽曲もライブで楽しんでいただけたらなと思います。
坂本 私もやっぱり演奏するときに、坂井(泉水)さんの歌詞に元気をもらうときがすごくあって、その日その日で響く言葉も結構違ってて。だから、今の若い私たちと同じ世代の方に、もっと届けたいなって思っています。
-ZARDとSARDの違いについてひと言ずつ、いいですか?
神野 全然違いますよね。私はZARDさんは人生に差し込む光のような存在だと思っていて。それには自分ではなれないと思っているので、ZARDさんは本当に大きな存在で、それに比べたら私はまだ卵みたいなものです。だからもっと頑張っていかないとなと思っています。
杉岡 全然違います。ZARDさんの楽曲はすごく落ち着くというか。安心できる曲が多い。私たちの楽曲では「元気さ」というか、そういうところを感じていただけるんじゃないかなと思います。
坂本 ZARDさんは手の届かない存在というか、すごいなってずっと思うので比べられないです。
神野 神々しくて比べられないですね。
杉岡 ZARDさんってライブが少なかった。私たちはすぐに会えるバンドなので、イベントで皆さんと一緒にZARDさんを感じられたらなと思います。
-初の全国ライブツアーが9月に行われます
神野 これまでのライブは東京と大阪の2カ所だけだったんです。今回は5カ所に行きます。
-ツアーへの意気込みや楽しみを教えてください
神野 地方にイベントとかで行かせていただいた時にファンの方と直接お話ししていて「東京と大阪だけだと遠くて行けないんです」って方が多くて。今回「やっと行けます」って声も聞けた。今回のツアーで初めて見てくださる方も多いと思うので、ちょっと気合を入れて、一緒に楽しみたいなと思ってます。
杉岡 5カ所を回るので、その場所ごとにトークも変えていきながら楽しみたいなと思います。
坂本 リリースイベントで福岡に行ったことがあって、その時に「ライブで福岡に来て欲しい」ですとか、結構ファンの人がおっしゃってたので本当にうれしいなって思います。
-YouTubeチャンネル登録者数が10万7000人。TikTokのフォロワーが3万7000人。その数字についてどう思いますか?
神野 全然足りないと思います。今年5周年なのでどんどん活動して、人の目に留まるチャンスだと思っているので、アピールしていきながら頑張りたいなと思います。
杉岡 最近イベントで回らせていただいてて、メンバーそれぞれフォロワーが増えてきてるなっていう実感はあるので、もっとこの調子で知っていただけたらなと思います。
坂本 私ももっともっと増やしたいと思っていて、家族の周りの人とか友達とか結構見てくれていて楽しみにしてくれているので、もっと増えたらいいなって思います。
-アルバム曲を聴いていると神野さんの歌声と坂井さんとがシンクロするというか似ていると感じることもあります。ご本人は意識していますか?
神野 何度か「似てる」って言っていただいたことがあるけど、自分では本当に似ていないと思ってて…。ZARDさんの曲は別物として届けてるというか、SARD UNDERGROUNDとして届けています。歌い回しとかは坂井泉水さんの歌い方に寄せるようにはしてるんですけど、声までは似せれないなって思います。坂井さんの声は透明感がすごいんで。
-透明感では坂井さんに勝てないってこと?
神野 はい。ただ私は違う部分でいいところを出していきたいなって思います。
-それはカバー曲を歌う時も?
神野 そうですね。ただのまねだと、トリビュートの意味もなくなっちゃうと思うので。だからSARD UNDERGROUNDの良さを混ぜつつ、今の世代の方にZARDさんの曲を届けていきたいなと思ってます。
-単なるモノマネじゃなくて自分たちらしく届けたいっていうこと?
神野 はい。ZARDさんへの愛を常に持ってです。
杉岡 本当に坂井さんは透明感が透け透けで、お顔も容姿も大好きです。こんな女神な人いるんだなってずっと思っています。
坂本 (坂井さんの)まっすぐ届く声っていうのが大好きで。恋愛ソングだけどすごく勇気をもらえる歌詞もあって、日々元気をもらってます。
神野 恋愛ソングだけど勇気をもらえるっていうのは、ほとんどの曲がそうですよね。
-最後に日刊スポーツの読者にメッセージを
神野 SARD UNDERGROUNDの楽曲を聴いていただけるとうれしいです。ZARDさんの曲も愛を込めて届けていきたいですし、オリジナルも誰かの光になれるように制作をしていきたいと思っているので、ぜひ応援よろしくお願いします。
杉岡 ZARDさんへの思いや私たちの良さを知っていただけるようなインタビューだったかなと思うので、これを機に曲も聞いていただければなと思います。
坂本 私たちの音楽で勇気とか元気を届けられたらいいなと思っているので、ライブでお会いできたらうれしいです。
◆SARD UNDERGROUND(サード アンダーグラウンド) ボーカル神野友亜、ベース杉岡泉美、キーボード坂本ひろ美の3人組。ZARDの長戸大幸プロデューサーから「作品を後世に伝えて」と託されて19年9月にカバーアルバムでデビュー。21年からはオリジナル曲も発表。YouTubeチャンネルの登録者10・7万人、TikTokフォロワーは約3・7万人。バンド名はZARDの「Z」を反転させて「S」にした。
◆神野友亜(しんの・ゆうあ)2000年(平12)9月14日生まれ。滋賀県出身。ボーカル。特技は長距離走。
◆杉岡泉美(すぎおか・いずみ)1999年(平11)12月12日生まれ。兵庫県出身。ベース&コーラス。特技は早歩き。
◆坂本ひろ美(さかもと・ひろみ)1995年(平7)12月29日生まれ。島根県出身。キーボード&コーラス。特技は手品、トランプ。