演歌歌手の青山新(25)が8月27日、観光大使を務める宮崎県椎葉村で、大使として初仕事となる村のプロモーションビデオ撮影を実施した。記者は椎葉村で青山の撮影の様子を取材する機会に恵まれた。

椎葉村は、宮崎県西部に位置する人口わずか2100人ほどの村。天然記念物の八村杉、重要無形文化財の椎葉神楽など多くの伝承や地理的特性から日本3大秘境の1つとされている。恥ずかしながら、取材が決まるまで、どこにあるかはおろか村の名前すら知らなかった。

実際に行くと、まさに“秘境”だった。熊本県と宮崎県の県境を越えたあたりから建物が消え、災害で片側の車線が崩落したとみられる道路や舗装されていない道が増え、気づけばあたり一面緑の山にたどり着いた。車とすれ違うことも少なければ道を歩く人を見ることはほとんどなく、想像以上のひとけのなさに驚いた。

それでも、最初に向かった「大いちょう展望台」に行くと、風や川の音が心地よく、空気が澄みきっていた。普段仕事をしている蒸し暑く照り返しの強い東京とは違い、どこか呼吸がしやすかった。千葉・浦安市出身の青山も心地よさそうな表情で撮影を行い、「椎葉村にやってきたよ!」と、対岸に望む棚田に向かって思いきり叫んでいた。

青山は昨年11月、同村で行われる「椎葉平家まつり」に出演する予定だった。しかし、地震や台風で道路が一部寸断されるなど甚大な被害に遭ったことで中止に。代わりに今年3月、初めて椎葉村を訪れ、村民限定のコンサートを開催。その縁で観光大使就任のオファーを受けたという。

この日が2度目の訪問だったと明かしたが、「決してここで生まれ育ったわけではないけど、故郷というか、そういった懐かしさを感じました」と、樹高日本一という32メートルを誇る「大久保の大ヒノキ」や高さ10メートルのブランコなどを堪能し、豊かな自然を満喫した。

村民からの歓迎の気持ちも受け取ったといい、「皆さんが温かくて、村民の方同士での絆も感じた。観光名所だけじゃなくて、そういった村全体の雰囲気も魅力の1つ」と話した。村の観光協会や飲食店など至る所にポスターや写真が貼り出され、すでに村のスーパースターとして愛されているようだった。

芸能取材をしていると、土の上を歩いたり森の中に歩いて行ったりする機会は少ない。滞在時間は数時間ではあったが、この秘境に足を運んで絶景の数々やすばらしい料理を体験できたことは、これまでの人生の中でも指折りの貴重な出来事だった。帰り際、青山から「僕もこの村がもっと好きになりました。また来てください」と声をかけられた。秘境ゆえに簡単に行ける場所ではないが、また必ず椎葉村に行って、豊かな自然や900年以上の歴史が生んだ伝統文化にも触れたいと思う。【野見山拓樹】