渡辺真起子(57)が20日、東京・新宿武蔵野館で行われた主演映画「無明の橋」(11月28日に富山で先行公開)公開記念舞台あいさつに登壇。10年「トルソ」(山崎裕監督)以来、映画では15年ぶりの単独主演作だが、坂本欣弘監督(39)から20年の「もみの家」への出演後、今作の主演のオファーを受けても「私の中では、あまり真面目に聞いてなかった。へぇ、そう? と。他の女優さんを勧めていた」程度の受け止めだったと振り返った。

その裏には、現代における映画製作の難しさがあることも付け加えた。「やりましょう、と言ってくれることはあるけど、たどりつくのは、まれ。人生の中で映画を何本も撮れるような環境では日本はない。準備に3、4年かけて1本、撮ったら責任を負う…監督にとって大きい者。期待しすぎると不自由になる」。その上で「やれなかった時のことも考える。照れもある。心配しながら連絡を取り合って、本当にやるんだと…ちょっと、おびえていました」と言い、照れ笑いを浮かべた。

「無明の橋」は、古くから山岳信仰の対象とされてきた富山県の立山に入山を許されなかった女性のために3年に1回、催される女人救済の儀式「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」がモチーフ。白装束と赤い帯を着けて目隠しをし、さんずの川に見立てた布橋を渡ることで極楽浄土を願うという儀式だ。渡辺は劇中で、3歳だった愛娘を亡くして心に癒やせぬ傷を負い、強い自責の念を背負いながら生きる女性を演じた。冒頭9分超にわたりセリフがないなど、沈勇な思いを抱え、言葉が少ない役どころだ。布橋灌頂会に、導かれるように参加した、立山で出会ったさまざまな人々と出来事を通じて、いかにして新たな1歩を踏み出せたのかを描いた。

渡辺は「役は、役者1人で作れるものじゃない。身を任せ、見つめていただく中でできることはある。現場で、ギャアギャア発言はしたけど、いろいろな人たちが浮かび上がらせ、立体化してくれると、のんびりやっていた」と撮影を振り返った。

舞台あいさつの最後に、渡辺は「静かな時間の中で、生まれるとか死ぬとか、誰かとの出会いとか…自分が誰にも見つけられていないような気持ちで生きていても、誰かが見つめていてくれたりとか。誰かを思うことで、生きている存在が忘れられないでいるのかなと、この映画を自分で見て、そう思った」と作品を評した。

この日は、立山で育ち、布橋灌頂会の手伝いをしたことをきっかけに由起子と行動を共にする少女・沙梨を演じた、今作が長編映画デビュー作の陣野小和(20)、布橋灌頂会への参加をきっかけに由起子と沙梨と関わり合いを持つ夏葉を演じた木竜麻生(31)タクシーの運転手・細田を演じた吉岡睦雄(49)も登壇。