八代目尾上菊五郎と六代目尾上菊之助の親子が3月26日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で記者会見を行いました。
昨年5月に襲名をしてから約10カ月。襲名への思いや、伝統芸能を守りながら発展をさせていく決意などを明かしました。
菊五郎は歌舞伎について「人間の葛藤などを描き、人への思いやりや人情が分かりやすく描かれている。そこが本質」と説明。海外公演では日本語という“言葉の壁”はあるものの「例えば映画『国宝』でも描かれている『道成寺』は踊りなのでセリフはあまりない。ストーリーが分かれば外国のお客さんでも楽しんで見てもらえる」と自信を見せました。
ここでも、大ヒット映画「国宝」の名前が出ました。
作家吉田修一氏の小説が原作で、任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢亮)が歌舞伎役者となり、芸に人生をささげるストーリーです。昨年6月に公開し興行収入は邦画実写初の200億円を突破。「芸能記者として早く見にいかないといけないな」と思いながら延び延びになっていました。ですが、会見に背中を押されて先日、映画館に行きました。
朝日新聞に17年1月から翌年5月まで連載していた小説は紙面で読んでいるので、原作の大まかなストーリーや登場人物などは把握しています。
映画を見た直後の感想は「周囲の人物の詳細は描かずに喜久雄を中心とした物語に特化していたな」でした。木に例えるなら、幹を描くために枝葉を描写しなかったということでしょうか。原作ではこの枝葉の1つ1つ(1人1人)がすごく魅力的です。例えば喜久雄を「坊ちゃん」と呼ぶ2歳上の徳次、京都祇園の舞妓(まいこ)との間に生まれた綾乃などは“脇役”ですが、スピンオフ映画ができるほどキャラが立っています。菊五郎の言葉をかりれば原作では「心に抱える多くの葛藤」を持つ「思いやりや人情に厚い」人物が何人も描かれています。
確かに「国宝」は小説も映画も面白い。約10年ぶりに原作を読みたくなりました。【松本久】



