第79回カンヌ映画祭授賞式が23日(日本時間24日)フランスで開かれ、濱口竜介監督(47)の「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)にダブル主演した岡本多緒(41)とベルギー出身のフランスの俳優ビルジニー・エフィラ(49)が、共同で女優賞を受賞した。日本人俳優の女優賞受賞は史上初の快挙。俳優賞の受賞も、男優賞を受賞した04年の柳楽優弥(36)、23年の役所広司(70)に続き3人目。世界3大映画祭での女優賞受賞は、14年のベルリン映画祭(ドイツ)の黒木華(36)以来12年ぶり。
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受賞を告げられると、2人は信じられないとばかりに顔を見合わせた。濱口監督と抱擁を交わしたエフィラと同監督に背中を押された岡本は、手をつないで登壇し涙した。エフィラが劇中でも披露した日本語で「ありがとうございます」と感謝すると、岡本は「夢さえも超えています」と歓喜。同監督も目を潤ませた。
全ての始まりは、がんの転移を経験した哲学者の宮野真生子さんと人類学者の磯野真穂さんが交わした20通の往復書簡を元にした同名共著を、21年頃に濱口監督が松田広子プロデューサーから映画原作として提案されたことだった。同監督はパリを舞台に介護施設の施設長と末期がんの日本人演出家が偶然、出会い心の交流を交わす脚本を執筆し、以前から仕事ぶりを知っていた2人を主演に起用。岡本は「2人が魂を交換し合う文章が存在したことが映画の始まり。愛と勇気に感謝したい」と語った。
今作は昨夏、濱口監督がパリで海外での撮影に初挑戦した。モデルとして06年に渡仏し、パリ・コレクションに参加などフランスに縁のあった岡本は10カ月、準備してエフィラと出会い「電撃的」なものを感じた。「強いつながりを持ち魂を交換し合う2人を、どうやったら演じられるかと思ったけれど、支えられ不安が解けた。現場で彼女からもらったものに共鳴して返した」と劇中の2人同様の関係性を感じたと感謝した。
トップモデルとして世界で活躍も、拠点が海外だったため日本では知る人ぞ知る存在だった。16年に結婚したテンジン・ワイルド氏は世界的な編集者、クリエーターで20年にブランド「ABODE OF SNOW」を共同で設立するなど実業家としての一面も持つ。23年から拠点を日本に移し、名義をTAOから変えドラマ、映画に出演していた中、縁の深いフランスで世界の頂点に立った。第1子を妊娠した身重の体で受賞し、濱口監督から祝福されると「もう、出てきちゃいそう…興奮して」と言い、満面の笑みを浮かべた。
自身が演じた役のモデルの宮野さんは、原作の出版2カ月前の19年7月に42歳の若さで亡くなった。会見で「監督と一緒にお墓参りに行かせていただいた。映画の評価を喜んでくれていると、いいなと思っています」と天に呼びかけた。【村上幸将】
◆「急に具合が悪くなる」 パリ郊外の介護施設「自由の庭」施設長のマリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることが理想も、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされる。その中、末期がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理(岡本多緒)と出会い、描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれた2人の関係は、真理の病の進行とともに劇的に深まり、魂を通わせ合うようになる。
◆岡本多緒(おかもと・たお)1985年(昭60)5月22日、千葉県生まれ。14歳で日本でモデルとしてデビューしミラノ、ロンドン、ニューヨークなどトップメゾンのショーで活躍。13年に真田広之(65)も出演の米英合作映画「ウルヴァリン:SAMURAI」(ジェームズ・マンゴールド監督)で映画デビュー。谷原章介(53)主演の14年のWOWOW連続ドラマW「血の轍」で日本のドラマに初出演。17年の中国映画「マンハント」(ジョン・ウー監督)で福山雅治(57)と共演。23年に自身で初めて企画・監督・脚本・出演を手がけた短編「サン・アンド・ムーン」が、東京国際映画祭のAmazon Prime Videoテイクワン賞のファイナリスト作品に選出。176センチ。



