ロックミュージシャン内田裕也容疑者(71=本名・内田雄也)が、別れを切り出した女性(50)に復縁を迫って脅したほか、女性宅に無断で侵入したとして、警視庁原宿署に強要未遂と住居侵入の疑いで12日に逮捕されていたことが13日、分かった。内田容疑者の逮捕を受けて同日午後、妻で女優の樹木希林(68)が都内の自宅で会見。夫の交際相手を「スチュワーデスさん(キャビンアテンダント)」と明かした。内田容疑者は「脅すつもりはなかった」「部屋に入ったことは間違いない」と容疑を認めている。同容疑者は、今日14日に送検される。

 内田容疑者が逮捕されたのは12日。逮捕容疑は、内田容疑者が4月2日に、交際していた都内の女性会社員宅に「会社に連絡した。内容は『暴力団と交際している。あぶりをやっている』。まだ実名(女性の名前)は言っていない。よく考えて、1週間以内にTelを。今ならまだ間に合う」という内容の手紙を投函(とうかん)したというもの。暴力団や、覚せい剤の吸引法を示す「あぶり」などの言葉を書いて女性を脅したため、警視庁では捜査1課が動いているという。

 さらに同19日、内田容疑者が女性宅に行ったところ、鍵が取り換えられていて入れなかったため、業者を呼んで鍵を無断で取り換えた。帰宅した女性は部屋に入れず、中から内田容疑者が出てきた。警視庁によると、内田容疑者は「手紙を書いたことや、部屋に入ったことは間違いない」と容疑を認めた。「脅すつもりはなかった」などと話しているという。

 2人は09年12月ごろからから交際を始めた。今年に入って女性が別れ話をしたが、内田容疑者は応じなかった。女性は今年3月、原宿署に「暴力を振るわれている」と相談。これまでに、内田容疑者が女性の実家に押し掛けたり、復縁を迫る内容の手紙を数回送り付けたりしたという。

 妻の樹木は都内の自宅で会見。内田容疑者のマネジャーから聞いた話として、事件の背景を説明した。「スチュワーデス(キャビンアテンダント)の女性で、彼女が以前に付き合っていた人に相当貢いでいた。お金を返してくれないと内田に相談したら『どうにかしてやる』と言って、お金を返させた。そこから(交際へ)発展したらしい」。

 内田容疑者は、東日本大震災の発生後、ボランティア活動に積極的だった。募金活動やチャリティーライブのほか、4月6日には宮城県石巻市へ炊き出しに行き、ピザとミネストローネ400食、バナナ690本、みかん690個を提供した。同月中旬にも被災地に赴いた。同14日のイベントでは「清く正しく生きているわけじゃないけど、10%の正義感に突き上げられて行動しています」と話していた。

 内田容疑者は、音楽のほかに映画製作なども手掛けた。最近では、政府の事業仕分け会場に姿を見せ、政治批判を繰り返していた。社会的な矛盾に目を光らせ、声高にメッセージを発信していただけに、説得力を欠く行動だった。内田容疑者の所属事務所は「いずれ会見などで本人の口からお話しさせていただきたいと思います」としている。

 ◆内田裕也(うちだ・ゆうや)本名・内田雄也。1939年(昭14)11月17日、兵庫県生まれ。60年、日劇ウエスタンカーニバルでロック歌手としてデビュー。77年「不連続殺人事件」で映画初主演。86年「コミック雑誌なんかいらない!」で各映画賞の主演男優賞を受賞。92年「エロティックな関係」98年「共犯者」など出演多数。ジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻らとも親交があった。91年に東京都知事選出馬し、94年にアフガニスタン訪問。夫人は女優樹木希林。1人娘の也哉子さんは95年に俳優本木雅弘と結婚。過去には83年に銃刀法違反の罪で逮捕された経験もある。