<連載「気になリスト」(9)>

 俳優高橋光臣(30)というより、「松岡先生」と言ったほうが、分かりやすいかも知れない。堀北真希(24)主演のNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で不器用だが真っすぐな性格の医師、松岡を演じた。梅子の恋の相手として一躍注目された。高視聴率を獲得した国民的番組への出演で一体どんな変化が起こったのか。

 「月に約5通のファンレターが200通近くになりました。小中学生から、上は90代まで。多くが女性です。『朝から元気をもらえた。ありがとう』という言葉が多いんです。本当は僕のほうがありがとうなんですけど。仕事も増え、人生が動いた作品です」

 堀北とは07年「花ざかりの君たちへ」、09年「アタシんちの男子」に続き3度目のドラマ共演だった。

 「当時ほとんど会話したことがなかった。あいさつ程度です。ところが今回は真希ちゃんから積極的に話しかけてくれました。最初、敬語で話したら『ミツ君、気持ち悪いよ』と言われたり。話していることが本当に不思議な感じでした」

 7年前に俳優デビューした後も、工事現場や飲食店などでアルバイトをして食いつないだ。俳優をあきらめる気はなかった。強気の原点は高校時代。大阪・啓光学園でラグビー部に所属した。関西屈指の強豪だ。

 「高校3年の時、全国大会を前に骨折して試合には出ていません。悔しくて東洋大でもラグビーを続けました。成績は良くないですけど」

 高校時代はBKでスクラムハーフとセンター、大学ではFWフランカー。高校時代のチームメートには日本代表もいる。

 「日本代表クラスの友人にはかなわなかった。それで大学時代、本当にやりたいことを探した。ラグビー以外なら何でもゼロからのスタート。どうせなら不可能なことをやろうと。たまたま映画『ラストサムライ』を見て心を動かされた。でも渡辺謙さんや真田広之さんのまねは無理だと思った。そう思った瞬間、不可能なのはこれだと」

 なぜあえて不可能なことに挑んでいくのか。

 「高校、大学時代にも試合中に後輩が亡くなったんです。死ぬよりつらいことはないと思い、では苦しんでみるかと。それまでラグビー以外では工事現場でしか役立ったことはなかったので」

 控えめで誠実。今は1DKのマンションで自炊生活を送る。妄想なら無料だからと「いつかはシアター室やトレーニングルームのある家に住みたい」という。【中野由喜】

 ◆高橋光臣(たかはし・みつおみ)1982年(昭57)3月10日、大阪府生まれ。05年フジテレビ系「WATER

 BOYS

 2005夏」で俳優デビュー。06年テレビ朝日系「轟轟戦隊ボウケンジャー」でドラマ初主演。07年フジテレビ系「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス」、10年NHK大河ドラマ「龍馬伝」などに出演。特技や趣味は剣道2段、乗馬、ラグビー。176センチ、血液型A。(11月14日付・紙面から)