受験の季節がやってきた。今月17、18日には大学センター入試が実施されるが、国公私立の一般入試前に4割以上が推薦で合格している時代の今、芸能人高校生もAO入試などに挑戦していた。ファッション誌「セブンティーン」モデルの藤井サチ(17)は、同入試で上智大に合格。「一芸に秀でた芸能人は有利」と見られがちだが、そうではない現実があった。

 合格証書を手にした藤井は言った。「今、思うとゾッとします。AO入試を自力でやっていたら、どうなったかと…。本当に簡単ではありませんでした」。

 高1でモデル活動を始めた藤井は、仕事と勉強を両立し、漠然とAO入試を頭に描いていた。そんな高3の夏、「セブンティーン」編集長から、芸能人を多数、AO入試で大学に合格させている教育研修会社のホープス(東京・南青山)を紹介された。だが、そこで現在のAO入試が芸能人に甘くない現実を知った。「高校の評定平均が低ければ受けられる大学が限られます。芸能活動で得た経験のアピールはできますが、特別扱いはない。仕事と勉強の両立ができているかを疑われ、マイナスになることもあるんです」。

 ネット上では「有名な〇〇事務所社長の推薦書があれば、楽勝でしょ」などの書き込みもあるが、取材によると、15年入試においても志望校に合格できなかったタレント、アイドルが多数いた。

 母親が米国人の藤井は、国際関係論を学べる上智大総合グローバル学部を志望。自己推薦書(800字程度)には、貧困に苦しむインド人少女との文通経験、タイの孤児院でのボランティア経験、ダンス部のことも書き、モデル活動については100字程度にとどめた。「ホープスの方と話し合って、アピールポイントを他にも探し、大学で学ぶ内容につながることを書きました」。

 試験当日、小論文のテーマは「感染症が広がった時にあなたが知事だったらどうするか、限界や困難を具体的に示して述べなさい」だった。これもホープスで国際問題を学び、エボラ出血熱に関する知識を得ていた上、小論文指導を受けていたことで対応できたという。面接も練習を繰り返していたことで落ち着いて自己アピールができた。「オーディションとは全く違う感覚。将来の夢、勉強と仕事をどうやって両立してきたかも話せました」。

 近年、難関大のAO入試を突破した芸能人は少なくないが、それはしっかりと対策と努力があったからこその結果といえる。今春から「上智大生」の肩書も得る藤井は「大学で学んで友達も作り、人生を豊かなものにしたいです。キャリアを生かした海外からのリポートなど、仕事も幅も広げたいです」と目を輝かせた。【柳田通斉】

 ◆AO入試

 個人の資質、個性、経験、熱意などを総合的に評価する入試。「Admissions(入学許可)

 Office」の略で、90年に慶大藤沢キャンパスの2学部がいち早く導入。現在では大半の大学が実施している。方式は書類(自己推薦書、課題リポート)、小論文、面接などで上智大総合グローバル学部では、評定平均4・0以上、TOEIC500点以上の出願条件があり、倍率は約2倍。国公立大では、センター試験を「免除する」「課す」2種類のAO入試がある。

 ◆藤井(ふじい)サチ

 1997年(平9)3月6日、東京生まれ。ミスセブンティーン2012年に選出され、同誌専属モデルに。母親が米国人で愛くるしい容姿から「甘ハーフちゃん」と呼ばれ、表紙を飾ることも。家族は両親、姉、兄で、兄はロックバンド、The

 SALOVERSのギター藤井清也(22)。170センチ、血液型A。