大阪・関西万博について腰の定まらない在阪メディアだったが、やっと態度を明確にする社も現れた。2月半ばの毎日新聞は、ついに<能登と万博 保証なき両立>と書き、万博工事が能登復興の妨げになると危惧。<建設業界・政府「支障なし」を強調>としながらも、<延期論は強くなる可能性も>としている。

政治も動く。お膝元の兵庫県議会では維新の抵抗で「妨害にならないよう」と修正されたが、一時、自民会派から「能登復興の妨げになるなら万博延期やむなし」の意見書を国に提出する動きがあった。

政や官だけではない。町でタクシーの運転手と話していると、とりわけ万博アンバサダーの芸人の口にするのもおぞましい性加害が報じられてからは、「万博」は完全にタブー。特に女性から嫌われているという。

建設費2350億円。交通網など関連経費1兆円超をつぎ込んで、これほどまでに嫌われた国家的イベントが過去あっただろうか。

そんななか、来年の万博開幕日まで1年となる4月13日は目の前だ。それまでに万博中止を決定すれば参加国に払う違約金は全部で350億円。だが開幕日まで1年を切ると、844億円にハネ上がる。とはいえ、中止も延期もままならない現状。

だったらこれはどうか。先の毎日の記事には、輪島の朝市の焼け跡と万博会場で建築中の世界最大級木造建造物、大屋根リングの写真が添えられていた。350億円の巨費をつぎ込んで史上最大の“日傘”と揶揄(やゆ)されるリング。即刻建設を中止して木材すべてを朝市再建にあてたらどうだ。ささやかであっても、共感のさざ波が起きると思うのだが。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。