自民党神奈川県連会長として就任のあいさつに臨む小泉進次郎衆院議員=22年3月26日撮影
自民党神奈川県連会長として就任のあいさつに臨む小泉進次郎衆院議員=22年3月26日撮影

昨年秋、菅内閣から岸田内閣に政権が変わった際に環境相を退いて以来、表舞台での活躍の機会が減っていた自民党の小泉進次郎衆院議員(40)。4月から新たな肩書が加わることになった。

自民党神奈川県連会長。進次郎氏は神奈川県選出(神奈川11区)の国会議員だが、県連会長は自身の選挙区だけでなく県全体の党組織や人、さまざまな課題をとりまとめていく役どころだ。前任の小此木八郎氏が昨年、横浜市長選出馬に伴い辞任後、事実上「空席」になっていた。県連会長選は2月に告示され、進次郎氏のほかに立候補者はおらず、無投票で選ばれた。

40歳での就任は、同県連で最年少という。ちなみに進次郎氏の父、純一郎元首相は県連会長に就いたことはない。県連と折り合いが悪い時期もあり、首相就任前には他党議員のパーティーに出席したとして、役職停止処分を受けたこともあった。純一郎氏の代から小泉家を支え、3月末で県連幹事長を退く土井隆典県議は、3月26日に行われた新会長決定の県連会合で「親父さんは県連といつも侃々諤々(かんかんがくがく)やっていたような気がする。時が流れて(息子の)小泉代議士が県連会長としてチーム神奈川を引っ張るリーダーになった」と、感慨深そうに語っていた。

ただ、県連会長というと、ベテランの国会議員や地元の有力議員が務めることが多いポストでもある。進次郎氏はこれまで環境相をはじめ、党の青年局長や農林部会長、厚労部会長など省庁や自民党本部で、組織を率いる立場にいた期間が長かった。今回関わる地方政治は、自分の知識だけでは対応できないことも多いはずで、就任のあいさつでも「分からないことだらけ。分からないことは教えてください」と打ち明けた。調整や根回し、折衝など、表に見えない部分でこれまでとはまた違った立ち回り術が必要になる。

環境相退任後、福田達夫総務会長のもとで党の総務会長代理に就いたが、メインのポストからは外れ、「冷や飯」とやゆされることもある。その進次郎氏が、地元組織を束ねる県連会長職に就く。今夏の参院選に向けた「地元の顔」という側面もあるが、永田町で働く政界関係者は「実際は、地道な作業が必要になる『ぞうきんがけ』だ。自分より年長の議員も多いだろうし、これまで以上にリーダーシップが問われる局面も増えるだろう」と話す。

進次郎氏自身「(会長職を)受けるとは思わなかったという方が多かった。『面倒くさいのによくやるね』ということではないか」と語った。その上で「県政界で長く活躍された方からも背中を押していただいた。自分が求められるのなら、少しでもお返ししたい」とも口にした。

2009年の初当選から13年。中央政界の目立つポストでの活動が多かった進次郎氏にとっては、「地力」をつけるためのタイミングがあらためて訪れたといえるかもしれない。

進次郎氏の「リーダー像」は一貫している。初めて「長」のポストに就いた自民党青年局長時代、自身の「リーダー論」について聞くと「リーダーには、おれについて来いタイプと、皆に支えられるタイプがある。私はどちらかといえば後者」と言っていた。県連会長就任のあいさつでも同じことを語っていた。自身の野球経験を引き合いに「ポジションはセカンドだったが、とにかくカバーする役回りだった」と振り返り、新しい立場でもチーム内でカバーし合う、チームプレーが大切だと訴えた。

自民党神奈川県連会長として記者会見する小泉進次郎衆院議員=22年3月26日撮影
自民党神奈川県連会長として記者会見する小泉進次郎衆院議員=22年3月26日撮影

初仕事は、今夏の参院選に向けた支持拡大だが、今回の神奈川選挙区は、超異例のシステム。通常の改選議席は4だが、前回19年参院選の当選者が任期途中で横浜市長選に出馬して生じた欠員1を補う補欠選挙が加わったため、5人が争う戦いに。しかも上位4人の任期は6年だが、欠員1人に関しては半分の3年というややこしさ。4位までと5位では任期も違い、3年後の参院選での戦略も変わる。自民党は神奈川で24年ぶりに2人を公認したが、与党の公明党や立憲民主党な他の政党も候補を擁立するため、激戦必至の選挙区なのだ。

県連会長就任の記者会見で「1人1人が自分の持ち場で全力を尽くさないと、参院選は勝てない。『選挙の顔』は県連すべてのメンバーだ」と危機感をみせた進次郎氏。将来の自民党総裁選出馬に関する質問も出たが「今、私の頭の中は、県連会長としての課題でいっぱい」とかわした。政策はプロセスも重要だが、選挙は結果がすべてというのが政治の世界の常。地元組織を率いる県連会長として臨む異例ずくめの「初陣」で思い描いた結果を出してこそ、次に向けた1歩を踏み出すことになる。【中山知子】