高市早苗首相が女性初の内閣総理大臣に就任して、1カ月あまりが過ぎた。歴史的な出来事で、前任者が「石破おろし」の末に職を去ったこともあってか、イメージを刷新するように新たに登場した高市首相に対する支持率は、爆上がり。就任直前の公明党の連立政権離脱で首相になれるのかどうか分からない時期もあったが、維新を取り込みなんとか連立政権を維持し、首相の座にのぼりつめた。
就任後は外交ラッシュでさらに注目を集めたが、今月に入り台湾有事をめぐる予算委員会の答弁を機に、中国との関係悪化が発生。懸念されていた「ちょっとした言葉への不安」という懸念が、現実のものになった。それでも、質問した側の立憲民主党の岡田克也元幹事長に批判が集まるなど、これまでの首相の「問題発言」に対する反応とも違う現象がみられる。これも「高市現象」の1つのように感じている。
そんな高市政権で、これまでの歴代首相との違いを感じる1つが、「首相動静」だ。高市首相は、総理が与党幹部や民間のブレーンなどと会食をする、いわゆる「夜日程」が、この1カ月で1つもなかった。首相の夜日程は「総理メシ」などといわれ、支持率が高い時には、食べに行った店がメディアでも取り上げられたり、支持率が伸び悩んでいたり何か問題を抱えているような時には、行った店が高級店だったりすればするだけ、批判の対象になったりしてきた。
個人的には、町中華のギョーザやラーメンから、高級日本料理、フレンチ、イタリアンまで、店のセレクトの幅が広かった小泉純一郎氏の夜日程に注目して以降、「総理メシ」の中身は継続してウオッチしてきた。食べているものはもちろん、だれと会っているかも関心事になる。メディアの間でどこに行くのか情報戦になることもあり、首相の行動パターンを探る指標の1つでもある。
首相時代にホテルのバー通いを批判された際、「ホテルのバーは安い」と言って批判されたのは麻生太郎氏(現・自民党副総裁)だったが、この時は、麻生氏なりの「哲学」があったと聴いた、災害時の会食が批判されるケースもあるし、首相それぞれの人となりが垣間見えることもある。
高市首相は今のところ、その機会がない。そもそもがギリギリのところで首相に就任し、直後の外遊続きで、臨時国会の論戦が本格的になると、台湾有事の問題で批判を受けている流れを考えると、「会食しているような暇はない」(自民党関係者)のが正しいのだろう。ただ、高市首相自身、飲み会が苦手とされ、いわゆる「飲みニケーション」を含めた人付き合いが課題とされ、それが過去2回の総裁選で敗れた一因という声が出たこともあった。
今年9月19日の自民党総裁選出馬会見では、「人付き合い」に関して、この1年で改善したかとの質問に「ちょっとは努力をしました。苦手な飲み会、私にしては、やったかなと思います」と強調し、「(出席して)いろんな学びがあった。地元のことで苦労しているとか、いろいろなことを知ることができ、とてもよかった」と述べていた。
ただ、女性の国会議員が男性議員が多数の飲み会に参加すると、お酌をしたり、時には下ネタ話にも対応したり、一般でも「あるある」な場面に直面することもあると、以前、別の女性国会議員のぐちを耳にしたことがある。高市首相も、そうした経験が次第に飲み会から足が遠のく1つのきっかけになったのではないか、と指摘する声もある。
時代の流れもあり、こうしたスタイルの国会議員の飲み会はかなり減ったといわれる。一方で、そうした会合で生まれる人脈や、得られる情報もあるのは確かだ。高市首相は、夜は宿舎に戻って政策の勉強をするのがルーティンのようだし、体調を崩している夫の山本拓元衆院議員の世話も担っている。そう簡単に生活スタイルが変わることもないだろうし、会食がないのが女性初の首相の「夜日程」であっても、これも1つの日本政治の変化ということになるかもしれない。
それでも、野党には「独断専行」などと批判され、時に仕事を1人で抱えがちともいわれる高市首相。外で食事しなくても意見交換などの場は持っているといわれるが、寝る間も惜しんで仕事をするタイプの高市首相に、息抜きの観点からも「総理メシ」を勧める声は周囲にもあると聴いた。
政界関係者は「まずは負担にならないよう、高市首相を支える女性議員とか、女性経営者らが集まって意見交換するのも一手じゃないか」。これには、なるほどと感じた。歴代首相の中には、夜日程を意見交換にとどまらず、「息抜き」の1つと位置づけていた人もいたと聴く。
一方で「首相に、公私ともに余裕が出てこないと厳しいだろう」と話す関係者もおり、これも確かにそうだろう。それでも女性首相ならではの「総理メシ」を、見てみたい気もする。高市首相の「動静」に、変化が訪れる日は来るのだろうか。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


